2021,10,04, Monday
実家暮らしなのですが、庭にマツの木があるのです。あんまり大きくないのですが、ずいぶん昔からあるような気がします。で、そのマツの木から、松脂を取ってみようと思いまして。
庭木なので、幹が細く、そして斜めに格好良く伸ばされていたので、よく松脂採集の写真で見るような、豪快な樹脂採取はできません。樹皮はメタセコイヤと違って、内樹皮もしっかり剥がしてしまった方がよいみたいです。すぐにじわじわと樹液が染み出してきます。一応、樹液の流れを作ろうかと、三角刀で切れ込みを入れまして、下の方に集約しようと思ったのですが、なかなかうまくいきません。斜めに生えているというネックでありまして。下に容器を置きましたが、そこにうまく流れてくれず、容器で受け止めるのはあきらめて、ペインティングナイフでときどきかき取って小瓶に詰めることにしました。 松の木から松脂を取ってみようと思ったのですが、出て来た透明な樹液をすぐに集めてビンに入れたのですが、密封すればそのままかと思ったのですが、白濁するんですね。 私はいろいろ松脂について誤解しているというか、無知でありすぎたと今更ながら思うところです。松脂は出て来てすぐは無色透明であって、それがもうヴェネツィアテレピンバルサムみたいなものだと思っておりました。そこから蒸留によりテレピン精油を得たり、ロジンが残ったりと。しかしそう単純なものではないといえるでしょう。そもそも、採取した時点の松脂というものはめちゃくちゃ濁っているしゴミも大量に含まれるというものでして、そこから精製の工程があったりて、われわれの使うテレピンバルサムも多くの工程を経ているわけです。たぶん。市販バルサムはそれどころか、ロジンとテレピンあるいはペトロールを混ぜて作っていたりすることもあり、そのようにでもしなければあのような綺麗な松脂にはならぬのでありましょう。 もっとも、この辺についての文献は、あれを読めばいいのかもしれないとか、ある程度の目安はあるのですが、しかし、実際に樹脂を採取したりなどしてから読まぬの気付かぬことも多かろうという意味もあって、読書と実践のバランスを取りつつ、勉学に励んでいるところであります。とりあえず言えることは、市販の画用液のバルサムはかなり人工的なものであろうかと思います。ロジンとテレピンまたは石油系溶剤を混ぜたものであろうかと思いますが、それを明示されているメーカーもあるようです。もちろんそれでいいのだと思います。そしてヴェネツィアテレピン、シュトラスブルクテレピン、カナダバルサムなど、バルサム類は原木や産地に違いではあるのだと思いますが、兎膠の原料が実は兎でなかったりということもわかりつつある今となっては、表示通りそのまま100%信用するという人はもう居ないとは思いますが、そうだとしてもまぁそんなに気にすることでもないかな、と。 以前動画でバルサムについて語ったことがありますが、今思うと画用バルサムについての私の認識は未熟なものであったと言えるでしょう。 上記動画公開のあと鳥越一穂氏はいろいろ調査されていた模様ですので、ご参照ください。 ■ロジン+ターペンタインによる還元バルサム https://torilogy.net/2741 |
2021,09,12, Sunday
自宅にメタセコイアを植えているのですが、そんなに大きくなったわけではないですけれども、そろそろ樹液ぐらいは採れそうだと思って試みているところです。何しろ、琥珀になる可能性のあるタイプの樹脂を出す木として、メタセコイアが上げられていますので、そのタイプの樹脂ならば、画用コーパルとして現在売られているタイプの樹脂を同じような性質を持つかもしれないという可能性がありまして。コーパルとはいったい何なのか、という疑問のちょっとしたヒントになってくれるかもしれないのであります。
で、2年前は以下のように樹皮を剥いて、傷を彫って樹液を集めようとしたのですが、失敗しております。 マツやキハダはこれでじわじわと樹液がわき出して、流れるように落ちてくるのですがメタセコイアではさっぱりでした。 他には、数センチほど穴を開けてストローを指しておく、これはカエデの木から樹液を取るときによく見る方法ですが、 こちらも何も出てこないのです。カエデなどは辺材のところを道管があって、水が流れていたりするのでありましょうが、メタセコイアはどうなんですが。どっちにしろ、辺材はあたりは水みたいなものが流れるところで、樹皮を保護するような樹液が噴き出すようなところではないのかもしれません。 それで私はいろいろ調べてはみたのですが、樹脂的な樹液が出てくるのは、師部(内樹皮)といういう、外樹皮のすぐ下の層らしい、というけっこう基本的な事柄に気がつきました。調べてみたとは言っても、難しい専門書は読んでおらず、農文協の絵本シリーズをひたすら読んでいたんですが、もちろんメタセコイアの本はありませんが、様々の樹種の本を見て、広く浅くいろいろ知識が付いたような気はするのですが。 というわけで、外樹皮だけを剥がして、内樹皮層と思われるところに包丁で切り込みを入れてみたところ、10日ほど経ったところで、このように樹液が出てきておりました。 他の木のようにすぐに出てくる感じではありません。数日経って、ふとのぞき込むと出ていることもある、という程度です。はじめはかなりねっとりしておりまして、数日経つと固く脆くなります。大木ならいざしらず、現状では爪で引っ掻いて取るくらいの大きさの樹液塊が得られるくらいです。東南アジアの樹脂採取の動画を見ると、けっこうがっつり彫って樹脂を出してたりしますが、それはダンマルの木みたいな樹脂大量放出樹のことであって、メタセコイアの場合は、本当にこの外側だけなのかもしれません。もっと大木になるとまた量が違ってきたりするのかもしれませんが。それにしても樹木というものは、幹の大半は死んだ細胞から構成されており、活発に生命活動しているのは、非常に薄い表面の部分だけなのですな。 そして、このように浅い傷をたくさん付けまして、せっせと樹液集めをしているところです。 9月いっぱいせっせと集めてみようかと思ってます。 |
2021,09,05, Sunday
Amazonにて、とても安い搾油機を購入しました。
OilPressMachine 搾油機 卓上油搾り機 フルセット 手動式 ステンレス製... このような手回し式の簡易搾油機はずいぶん前から買ってみようかどうか迷っていたのですが、商品の選定にはけっこう迷うものです。ちゃんと動くか怪しげなものが多いですから。同様の手回し式の搾油機で、もうちょっと立派そうな赤い搾油機も気になったのですが、あちらは鉄製らしく、手入れをさぼると錆びそうな心配があったので、こちらのステンレス製のものを注文。届いてすぐ中身をチェックしました。部品は欠品等も内容でした。カビか指紋ようなものがついていてアルコールウェットティッシュで拭きました。ゴムバンドが加水分解して崩壊しておりましたので、梱包したからそれなりの年数が経っていたかと思われますが、本体には影響はなさそうです。 さっそく亜麻仁を搾りたいと思いまして、フラックスシード 1㎏も購入。 よく見ると、ラベルに「※食品ではありません」と表記されているのだけれども、ではいったい何の為の商品なのでありましょう。食用の種子は大抵は加熱処理されて発芽しないようになっているのですが、これはどうなんでしょう。加熱処理されていても、実際にたくさん蒔くとちょっとは芽が出てくることもあるようですが。ポピーと違って植えても違法ということはないと思うので、試しに一部をプランターに蒔いてみたいと思いますが、それはともかくとして、実際にリンシードオイルを得てみました。 慣れないもので、種子など盛大に散らかしながらの作業となりましたが、一応搾油はできましたので、私の感想を交えつつ、本製品の使用方法についても解説したいと思います。 説明書はA4のペラ1枚だけであり、英語と中国語のみになります。要点を和訳しつつ、私のコメントも差し挟んでおきながら、以下に手順を解説したいと思います。まずは何はともあれ組み立てでありますが、マニュアルには各部の名称が載っている小さな図があるだけで、どちらかというとパッケージに使われている製品写真の方が大きいので、組み立ての際はこの写真を参考に行いました。ハンドルが上手く回せるような場所(テーブルなど)に設置します。かなりしっかりした場所に設置しないといけません。大まかに組み立てたら、圧搾ケージに圧搾ケージキャップを回し込み、それからさらにターミナルアジャストメントキャップを回して締めます。アルコールランプの綿芯(15cmくらい)を、付属のワッシャー(円形で中央に穴が空いている金具)に通し、外側に0.5cm出して、長い方は燃料ボトルの中へ。あまり燃えすぎてもよくないので、ちょっとだけ芯を外にだせば充分であろうと思います。燃料ボトルには燃料(ケロシンまたはアルコール)を入れます。※ケロシンはおそらく灯油のことかと思います。私は常備しているエタノールを使用。普通はメタノールでしょうか。そしたら圧搾ケージを約7分ほど加熱します。オイルを確実に出させる為で、これがないとまずほとんどの種子は人力で搾油するのは困難かと思います。圧搾ケージが50℃~70℃に達したら、材料をプレス機の注入口に入れることができると説明にありますが、アルコールランプで熱するれば当然あっという間にかなり高温になるわけですが、圧搾ケージ全体が温まるにはやはり7分くらいはかかるのかと思います。抽出中も加熱は継続しておくのだと思いますが、火加減はけっこう難しいです。ちなみに搾油の際に種子等を炒めてから行うことがあるけれども、この器具の場合は加熱しつつ行うので炒める必要ないようです。圧搾ケージが充分熱せられたら、注入口から材料を投入します。圧搾の開始時、ターミナルアジャストメントボルト(圧搾ケージの先についている回せるパーツ)はノーマル位置がよい。もし放出される塊が固すぎたり、ハンドルを回すときの抵抗力が強すぎるときは緩める。逆に放出物にオイルがまだ残っているような場合は締める、というふうに指示されておりますが、放出される種子残渣が固いと、詰まってしまってどうしようもなくなることがあるので、そこそこオイリーで緩めな状態で良しとした方がいいんじゃないかな、という印象を受けました。種子を入れてクランプを回して圧搾するのですが、先端のキャップの小さな穴から残渣がニョキニョキと出てきます。そして油が圧搾ケージの根元の細い穴から出てきます。こんなふうに上手くいったら、休まずに搾り続けた方がいいかと思います。手を止めると、種子が焼けてくるし、残渣が固くなって詰まって動かなくなったりします。 圧搾した油はゴミや不純物が混ざって汚く見えるかもしれません。 しかし数時間置くことによって、沈殿して綺麗になります。 というわけで、リンシードオイルが得られました。いずれ顔料を混ぜて乾燥試験をしたいと思います。なお、食用として使う場合は早めに消費した方がよろしいでしょう。 注意事項等ですが、搾油ケージ付近は熱くなるので、やけどしないように気を付けましょう。ターミナルアジャストメントボルトを回すときも、素手で触らず、耐熱手袋などしてやりましょう。ターミナルはレンチで回しますが、圧搾ケージやキャップを触らなければならない機会は多いので、耐熱手袋はあった方がいいかと思います。けっこう汚れるので、百均で売っているパン焼き用の綿製手袋みたいなものを使うといいかと思います。搾油後は器具類を速やかに清掃しなれけばなりません。種子残渣が固まってしまうとやっかいです。あと熱しながら搾油するということもあって、種子の臭いが周囲に広がると思います。手も亜麻仁油臭くて、洗っても当分は匂っていました。 というわけで、私もまだまだ使い慣れていないといいますが、1回試しただけなので、修練不足ではありますが、気がついたことをまとめてみました。ちなみに自分で搾った方がいいリンシードオイルが得られるとか、溶剤抽出よりも圧搾抽出のオイルの方が優れているとか、そのようなことは考えておりません。あくまで絵画材料の理解の為にやっております。 |