羊の角を煮てみたが、膠を作ることはできなかった
テオフィルスの技能書に書かれている膠の作り方は以下の通りである。

--引用開始--
生皮および牡鹿の角の膠について
これが注意深く乾かされたならば、同じ生皮の同様に乾かされた切片をとり、こまかく刻め。そして鍛工の鎚で鉄床の上でこなごなに砕かれた牡鹿の角をとり、新しい壺の中にその半ばになるまで(刻んだ生皮と)配合し、それを水で満たせ。こうして、しかし少なくとも沸騰しないようにしながら、その水の三分の一が煮つめられるまで、火にかけよ。そして汝は次のように試せ。即ち汝の指をこの水で濡らし、指が冷えた時、もし粘着するならば、膠はよい。しかしもしそうでなければ、〔指が〕互いに粘着するまで煮よ。その上でこの膠をきれいな容器に注ぎ、そして再び壺に水を満たして前のように煮よ。このように汝は四度まで続けよ。『さまざまの技能について』中央公論美術出版より
--引用終わり--

というわけで、牝鹿の角と、生の皮を煮て膠を作ってみたいと思ったわけであるが、それらの材料のうち、生皮を煮ると膠ができるということに関しては、既に充分納得しているので問題ないが、角で膠ができるのだろうかというところが気にならないでもないので、まずは予備実験的に、角だけを煮て膠ができるかを試してみたい。

牝鹿の角はないが、手元に羊の角があるので、これを煮てみよう。
羊の角を煮て膠を作れなかった

なお、テオフィルスは角をこなごなに砕いてと記しているが、私の羊の角は、巨大ハンマーを振り下ろしても傷一つ付かなかったので、「アラカン」というカンナのような削り道具を使って、削り節状態にした。
羊の角を煮て膠を作れなかった

羊の角を煮て膠を作れなかった

これを一人用グリル鍋で、弱火で煮る。
羊の角を煮て膠を作れなかった

結果であるが、ゼラチンらしきものが出てくる気配は全くなかった。
羊の角を煮て膠を作れなかった
写真は冷えた状態であるが、普通の水の用であり、ゼリーみたいにゲル化する兆候は全くない。接着力もない。

始め数十分、弱火で熱して結果が出なかったので、強火にしたり、水を追加したりなど、数時間にわたって試行錯誤したが、失敗であった。

鹿の角を煮て作った膠というのが、漢方薬として売られているので、鹿の角であればいけるのかもしれない。当方、日本画の材料に普段からそれほど慣れ親しんでいないのだけれども、日本画で使用される鹿膠は皮から得るのかと思っていたのだが、角が使われているのだろうか?(ちょっと調べただけでは鹿のどの部位を使っているのかまでは書かれていなかった)。

テオフィルスは牝鹿の角と、何か生の皮を煮て膠を作っているが、角と皮の両方を煮るというのは、洋の東西を問わず、そのような方法も行なわれたようであるので、もうちょっと角を煮るということに関して試してみたいところである。

なお、些細なことでもいいので、何かアドバイスありましたら、コメント欄に投稿頂けると幸いです。

| 絵画材料 | 10:59 AM | comments (4) | trackback (0) |
冬になったらPVA板が硬くなった
以前、PVA糊を厚めの板状に固めて、板膠と比較したことがありましたが・・・

参考:PVAを固めてみた。
http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=976

乾燥した後、非常に硬くなる膠に比べて、PVAは乾燥後もわりと軟らかく、手で曲げたりすることが可能だったけれども、冬になったらガチガチに硬くなってピクリとも動かなくなった。



部屋を暖めると、徐々に軟らかくなって、再び手で曲げることができるようになる。



ちなみに、曲げたまま冷気にさらすとそのまま固まるが、しばらく部屋に置いているとまた平らに戻った。

アクリル樹脂が、冬季に硬くなるので、輸送時に注意ということが、Justpaintに書かれていたけれども、PVAはどうなんでしょうね。描画層みたいに厚くぬらないから関係ないか。

外部リンク:アクリル絵画の安全な取り扱いと輸送
http://www.turner.co.jp/art/golden/technicaldata/justpaint/jp11/jp11article1.html

| 絵画材料 | 11:12 AM | comments (0) | trackback (0) |
高オレインと、高リノールの油を冷凍庫に入れて比較した
今年の冬の寒さはなかなか厳しく、室内のオリーブオイルが白濁し、固まっている。
しかし、他の食用油はとくにそんな気配はない。画材のオイルも大丈夫である。
ググって調べてみたところ、オリーブオイル白濁の原因は、オレイン酸の含有量が多い為と説明されていた。

そこで、ハイオレインのベニバナ油及びヒマワリ油を屋外に出して、寒い夜の中放置してみた。
高オレイン油と高リノール油を比較

右に見えるオリーブオイルは白く固まっているが、ベニバナ油(ハイオレイン)は全く問題ないようである。
高オレイン油と高リノール油を比較

ハイオレインのヒマワリ油、昭和産業のオレインリッチも特に白濁、固化のような現象はみられない。
高オレイン油と高リノール油を比較
オレイン酸含有率80%と表示されているので、オレイン酸の含有率的にはオリーブオイルに引けをとるものではない。むしろ、オリーブオイルよりも高オレイン酸であることを昭和産業のホームページに紹介されていた。エキストラバージンのオリーブオイルがピュアオイルより早く白濁しやすいように、オイル白濁の理由のすべてがオレイン酸に起因するというわけでもなくて、他にも様々な要素があるのだろう。

ちなみに、ハイリノールのヒマワリ油も同じ環境に置いたが、心なしか濁っているように見えなくもないけど、目立った変化はなかった。
高オレイン油と高リノール油を比較

外に放置するとか、回りくどいことをやっているような気がしたので、手っ取り早く冷凍庫に入れて確認してみることにした。
以下は半日冷凍庫に入れて取りだしたところである。

高オレイン油と高リノール油を比較
おおぉ!ハイオレインのヒマワリ油は白濁し固まっているではありませんか。

ハイリノールのヒマワリ油は透明な液状のままである。
高オレイン油と高リノール油を比較

というわけで、ハイオレインかハイリノールかわからないヒマワリ油やベニバナ油があるとき、冷凍庫に入れて白くなったものは、ハイオレインの可能性が高いということが言えるかもしれない。逆に透明だったからと言って、画材に用いれるほどリノール酸含有量が高いという判断をできるわけではないが。。。まぁ、試塗するのが一番いいとは思うが、いや、どっちにしろ画材店で売っている油を使うのが一番だが。でも、ちょっと気になるので、次は食用サフラワー(高オレイン)と画材用サフラワー(高リノール)で比較してみたいと思う。

| 絵画材料 | 12:44 AM | comments (0) | trackback (0) |
寒波が凄いので油を外に置いてみた
冬になると室内でもオリーブオイルが固まっていることがあるんですが、試しにいろんなオイルを一晩外に置いてみました。

寒波が凄いので油を外に置いてみた

撮影時の温度計の表示は2~3℃ぐらいでしたが、直前の数時間は余裕で氷点下だったと思います。

エキストラヴァージン・オリーブオイル

すっかり固まって不透明色になっております。

ピュア・オリーブオイル

エキストラヴァージンが茶色いけど、ピュアオイルは白く固まってますね。

味の素の亜麻仁油

瓶の外側はびっしり氷がついているが中の油は特に変化無し。

紅花食品の圧搾未精製亜麻仁油

特に変った様子なし。

スタンドオイル

普段から粘度が高いけど、どうもさらに高粘度になっていような気がする。気のせいかも。
いずれにしても、それほど大きな変化ではない。

ウォルナットオイル

ちょっと白濁しておりますが液状です。

で、まとめですが、理屈としてはオレイン酸主体の油が寒さで固まるという話なので、画材用のオイルはリノール酸またはリノレン酸主体であるから、オリーブオイルみたいには固まらないということです。

ふと、思ったのですが、これを利用してハイリノールとハイオレインの油を判別することができないだろうか、ちょっと試してみたいと思います。

| 絵画材料 | 10:53 AM | comments (0) | trackback (0) |
亜麻の実及びポピーシードを素手で搾油できないか試してみた
前回、胡桃を潰したものを布で包んで素手で搾ったら、思いの外、簡単に油を絞ることができたので、同じ方法で亜麻種子やポピー種子を搾油できないかどうか試してみることにした。いずれも種子の外見的な印象からは、素手で搾るのは難しいと思えるが、やってみないことにはすっきりしないものがある。

まずはネットで亜麻の実を購入。
亜麻の実
値段がちょっと高いような気がしていたけど、届いてみたらけっこうな量の亜麻の実だった。まぁ、搾油など試していたら、いつかは使い切れるとは思うが。ちなみに、カナダ産、加熱殺菌済み、製菓、製パン用との記載がある。生だったら、畑に撒けば芽が出てくるところですが、生の亜麻の実はシアン化合物を含むと言うことで、販売にはいろいろ規制がある模様。
できれば下記のものが欲しかったけど、残念ながらずっと品切れ表示である。
http://item.rakuten.co.jp/rawfood/raw_flaxseed/

これが亜麻の実である。
亜麻の実

そのまま素手で搾れるようなものでもなさそうなので、ミルミキサーで粉砕する。
亜麻の実

すごくいい香りが漂ってきた。パン生地に混ぜて焼くと美味しいかもしれない。
亜麻の実

布にくるんで搾ってみたが、全くと言っていいほど油が出てくる気配はなかった。布が多少油っぽく湿ったような気がする程度。
亜麻の実

次に、ポピーシードである。
ポピーシード

これもミルミキサーで粉砕。
ポピーシード
いい香りがする。食べてみたら、ピーナツバターそっくりの味であった。砂糖など全く加えてないのにすごく甘い。
触った感じではかなり脂っこい質感なので、胡桃同様、楽に搾油できそうな予感がした。

ポピーシード
布が湿って油がしたたりそうになるも、胡桃ほどではなくて、器に垂らすまでにはいたらなかった。両手は油でべとべとになったが。。。
さらに圧力をかけてみたが、ピーナツクリームみたいな茶色いものが染み出してきたので、これは無理だということで、この件は終わりにした。

潰した実を布で搾って搾油するという方法が無難にできるのは胡桃ぐらいで、亜麻、ポピーは難しいようだ、というのが結論である。

| 絵画材料 | 04:40 PM | comments (0) | trackback (0) |
胡桃からテレピン精油にて油脂の溶剤抽出を試みる
前回、布で包んで素手で圧搾するという方法により、胡桃から油脂を採りだした。
http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=1040

種子から油を取り出す方法としては、絞り出す圧搾の他に、溶剤で油を溶かしてとりだし、溶剤を揮発させて油脂を得るという方法があるそうで、この溶剤による抽出の方がはるかに多くの油を取り出すことができるということである。文献等で油脂抽出で使用する溶剤として見かけるのはヘキサンである。ヘキサンはとりあえず別途入手してみるとして、試しに手元にあるテレピンでやってみようかと思う。なお、油脂の搾油・抽出を理解するための個人的な勉強としてやっているものでありまして、記事の内容は正確性に欠ける点が多々あるかと思うから、その点はご理解の上で読み進めてください。

先日、ヒマワリのタネでも溶剤抽出をやってみたけれども、そのときはエタノール(アルコール)を使用した。
http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=1038
感想としては、アルコールの場合、水との親和性も悪くないから、油脂の他に水溶性の不純物もより多く含まれてしまうような気がした。抽出した油と顔料を混ぜて試塗してみたが、普通なら数日以上かかるであろう未精製オイルの乾燥が、1時間後には乾いて定着するという予想外のことが起こってしまった。これは水溶性の粘性物質が水分の蒸発で固化したんじゃないかとか適当な考察をしたりしてるのだけど、その辺もいろいろ試しているうちになんとなくわかってくることも多いでしょう。普通テレピンは抽出用の溶剤にはまず使わないと思うけど、試しにやってみるということで。なお、いずれの溶剤で抽出しても、自分で溶剤抽出した油は食用には絶対使えないでしょう。単純に搾って搾油したものは飲んでも全く大丈夫だと思いますが。

さて、手搾りによって搾油した後の胡桃の残滓を器に入れ、そこにテレピンを注ぐ。
胡桃油をテレピンで溶剤抽出

ラップをして30分くらい浸ける。
胡桃油をテレピンで溶剤抽出
と思ったのだが、うっかり眠ってしまって、数時間が過ぎてしまった。

で、布で濾して胡桃を除き、テレピンと共に油脂を器に注ぐ。
胡桃油をテレピンで溶剤抽出

その後、テレピンを完全に揮発させれば、溶剤に溶けていた油脂(および若干の不純物)が残ると思われる。

テレピンは普段画材として使っているとは言え、あまり身体によくないものであるから室内で揮発させるのもなんだと思って、外の軒下に置くことにした。それにしても、テレピンは画材として薄く塗布すると揮発が速いものであるが、こんな感じで器に入れたテレピンというのは、そんなに早々と揮発して無くなるというものでもないですね。それと、たぶん気温が低いと溶剤の揮発は遅くなるのではなかろうか。ヘキサンやエーテルを使用する場合でも、温度を高くして揮発させるようである。

というわけで、一日経ったけど、まだテレピンは残っているようである。
胡桃油をテレピンで溶剤抽出
やってみて思ったんですが、テレピンはやはり向いてないかも。ペトロールでも試したところであるが、ペトロールはたまたま切れている。しかし、やってもそんなに意味はなさそうである。とりあえず、ヘキサンを入手し、ちょろっと試して、溶剤抽出に関しては終わりにしたい。個人が油脂の溶剤抽出するというのは、食用にせよ画材用にせよ、そんなに意味あることとも思えないので、ひとまずは抽出に関する触り程度の体験ができればよろしいかと。圧搾による搾油は、食用ではやってみて損はないかと思われる。自分で搾った胡桃油など、その場で使う場合はとっても美味しいかと思われる。画材としてどうかという点はやってみないとわからないですな。やってみたら実は簡単に亜麻仁油とか搾れたってことになるかもしれないし、いくつかの原料、方法等で暇を見て試してみたい。ちなみに年内にやっておきたいこととして、搾油と蒸留がテーマであったけど、蒸留は年明け以降ですかな。年末年始にかけては地味に油搾りの作業でもアップロードしてこうかな、と。

-- 2012/01/02 追記 --

その後、数日放置していたら、テレピンがそれなりに揮発していったのか、いかにも油脂といった状態になってきた。
胡桃油テレピン抽出
下に残っている茶色いものは、胡桃のカスとかだと思われる。そう言えば、スタンドオイルの「スタンド」には置く、という意味があったと何かで読んだような気がするけど、単に置くというのも大事な精製工程なのかもしれません。置くと、不純物やゴミが落ちたりして精錬されるというか、単に置くだけで良いものになるとか。

これはこれでアリなのかもしれない。
胡桃油テレピン抽出

圧搾で機械的に搾油し、その残滓に残っている油脂をさらに溶剤によって抽出するという一連の過程を体験することができた、と思ってよろしいでしょうか。

| 絵画材料 | 12:36 PM | comments (2) | trackback (0) |
紡績するまでの中間製品
書名をメモするのも面倒なくらいに、繊維についての本を読みまくったのですが、特に現代ではなくて、歴史上どのような発展をしてきたかについて読んでたんですけど、何故かと言えば、いきなり現代の繊維工業の話を読んでも、さっぱりわからないもんですが、技術が発達してくる過程をたどると、理解できたりするもので、これは絵具に関してもそんな気がするわけであるけども、それはともかく昔は衣類、または糸や布のような完成品ではなくて、苧麻なら繊維を取ったというだけの青苧という中間製品で取引または納税されていたというような話を読んでおり、その中間製品みたいなものにちょっと興味が出てきて、いろいろネット上を探して下記のショップさんで、それらしきものを見付けたので購入してみた。

麻福 ナチュラル素材 ヘンプものづくり.net
http://hemp-material.net/

とりあえず、ヘンプ100%、生成りの布を購入。
ヘンプ
ヘンプ100%の生地ということで、後で何かに使ってみたい。

そして、以下が中間製品と思われるもの。
ヘンプ
繊維を取りだしたけれども、まだ糸にしていない状態であろうか。

下記の長繊維(未カット)というものも欲しかった。
http://hemp-material.net/SHOP/C0017-10.html
しかし、少量パッケージは品切れということで、今回は手に入らなかった。

ヘンプの落ち綿
ヘンプ
紡績する工程で発生する屑らしい。

サンプル帳も頂く。
ヘンプ

これはヘンプ紙
ヘンプ

| 絵画材料 | 01:33 AM | comments (0) | trackback (0) |
クルミから油を絞って油絵具を作ってみた
前回、ヒマワリのタネからの搾油する話を投稿したけれど、圧搾はうまくゆかず、溶剤による抽出法にて油らしきものを取り出したという程度の成果だった。
右を参照:http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=1038

炒ったものの方が搾油しやすいという話を複数の文献で目にしていたので、一応同じものを炒って試してみたが、結果は変わらないどころかむしろ悪くなった。使用したヒマワリのタネも、どことなく脂気が少ないような雰囲気ではあったし、別のタネを買ってきた方がいいかもしれないが、ヒマワリはそれほど本命ではなくて、亜麻、ケシ、胡桃、荏胡麻などの実を搾るのが最終的な目的でもあったので、気にせずに次々試していくことにしたい。

というわけで、今回は胡桃である。日本で油絵用に使う人は滅多にいないと思われるが、イタリアの油彩画家が使った油であり、亜麻仁油と並んで油彩画の歴史においては外せない乾性油である。

なお、すり鉢でタネを潰すのはけっこう時間がかかるので、ミルミキサーを用意した。
クルミから油を絞って油絵具を作ってみた

ミルミキサーの器に胡桃を詰める。
クルミから油を絞って油絵具を作ってみた

これは素晴らしい。数秒で細かく砕けてしまった。
クルミから油を絞って油絵具を作ってみた
すり鉢使ってたときは、DVDとか見ながら延々擦っていたのだが。。。
それにしても、なんかすでに全体的に脂っこい。期待できそうな予感が。

さっそく布でくるんで、手でぎゅっと搾る。
クルミから油を絞って油絵具を作ってみた
ちょっとした力で、既に油がじわっと染み出てきている。
前回、ガーゼで包んで万力で圧力をかけたところ、破れてしまったので、今回は、より丈夫であると思われるラミーを使ったが、これなら普通の綿布や二重ガーゼでも充分であろう。

手でぐいぐい搾ったら、どんどん油が出てきた。
クルミから油を絞って油絵具を作ってみた

写真でわかる通り、手が油でべっとりである。
けっこう出てくるものである。ほとんどが両手にべっとりついて、椀にしたたってくれないのだが、でもまぁ、実験に必要なくらいの油は絞れた。布で包んで素手で搾るというだけで油がこれだけ出てくるのだから、搾油器を使えばさらに大量のオイルが得られるのだろう。

これが搾った油。
クルミから油を絞って油絵具を作ってみた

胡桃油はイタリア人が油彩画に使用したことでも知られる乾性油であり、これで油絵具をつくることができる。
さっそく、顔料を練ってみた。
クルミから油を絞って油絵具を作ってみた
自分で搾ったオイルで作った油絵具である。

さっそく試し塗りしてみる。
クルミから油を絞って油絵具を作ってみた

ちなみに、この油を普段の制作に使用しましょうとは一切言わないけれど、ケシの実や亜麻の実はともかく、クルミはどこのスーパーでも売っているありふれたものなので、これを潰して布で搾ることで、自分で油絵具を作ることができるというわけだから、体験学習的なものとして、授業等に取り入れるといいかもしれませんね。

| 絵画材料 | 02:52 AM | comments (0) | trackback (0) |
ヒマワリのタネから油を取ってみる
農文協の『そだててあそぼう16 ヒマワリの絵本』に、ヒマワリの種を搾って油を取る方法が紹介されている。搾油器を使うというのではなくて、磨り潰したヒマワリの種を、綿布に包んで、手で搾ったり、麺棒で圧したりして搾油するという方法だけれど、ヒマワリのタネくらいの大きさなら、このように搾油できるということかしら。

いろいろ資料を探すために月2回ほど図書館に行っているけど、最近は、ほとんど子供図書館の資料を漁っている。長大な専門書を読む時間がないというのもあるのだけど、最近の子供向け図書は、子供だましというようなことは全然なくて、少ない字数、ページ数の中に、非常に濃密な情報が詰め込まれており、ときどき専門書にも書かれてないようなことが、実に簡単な言葉でずばりと書かれていたりしている。でもまぁ、言い換えれば、子供向けの本じゃないような気がしないでもないけど、いずれにせよ1冊1時間もかからずに読めて、得られる知識が多いので、広くお勧めしたいところです。

で、ヒマワリの種から油を絞ってみようと思い立ったわけだけれども、今年はヒマワリの近くにタデアイを植えたら、タデアイの繁栄は凄まじく、土の養分が全部タデアイに持っていかれたようで、ヒマワリは萎れてしまった。ということで、ネットで種を注文。
ヒマワリのタネから搾油する
生の種よりも、炒った種の方が搾油しやすいという話を、なんどか読んでいるのだが、とりあえずは生の種を買っておいた。殻は既に剥かれてあり、塩などの味はついていない。

すり鉢で潰す。
ヒマワリのタネから搾油する

布にくるんで搾る。
ヒマワリのタネから搾油する
布は、晒しの木綿とあったが、晒しでなく、生成だと、布にちょっと色素があって、油に色が付いてしまうからかもしれない。
今回は、ガーゼを二重にして使用した。

素手で搾っても油が出てくる気配がなかったので、万力に挟んでみた。
ヒマワリのタネから搾油する
布に油が染みて、さらに下の方には、ちょっと油が垂れはじめたが、ガーゼを使ったせいか、途中で破れてしまったので、中断。
次回は、もうちょっと丈夫そうな布を用意して、さらにちょっとタネを炒ってから試してみたい。

さて、種子からの搾油方法は「圧搾法」と「抽出法」があり、先に行なったのは、圧搾法であるけど、種子から搾れる油の量は限られており、それよりも溶剤を使った抽出法の方が、より多く油を抜き出せるのである。商業用途では抽出法が主流、あるいは圧搾法のあとに、さらに抽出法で油を取り出す。『ヒマワリの絵本』の凄いところは、溶剤を使った抽出法まで書かれているところである。含油率をはかる際に実験室で行なう方法として以下のように紹介されている。
--引用開始--
(1)ヒマワリの種5グラムを、コーヒーミルなどで粉砕する。
(2)それを50グラムのエーテル液に入れ、40分そのまま置く
(3)その溶液をこして、油をとる装置に入れ、温度を加えてエーテルを揮発、回収する。
(4)あとに残った油分をはかり、最初のタネの重さとの比率によって含油率を計算する。
--引用終了--
溶剤に油を溶かして、油を取り出し、溶剤を揮発させて油だけ残すという感じであろうか。エーテルとは実験等で使うエチルエーテルなのだろうけど、たいへん揮発しやすいので、このような実験に向いているのかもしれない。ただ、普通の室内でたくさん揮発させると人体に有害かと思われるので、エタノール(アルコール)でやってみることにした。一応、エタノールも油と親和性があるように思うが、正解かどうかはわからない。

とりあえず、先ほど失敗したカスにエタノールを注ぎ入れた。
ヒマワリのタネから搾油する

揮発しないようにラップで来るんで数十分待つ。
ヒマワリのタネから搾油する

その後、布で濾しながら溶剤を別の容器に移し、空気にさらしてエタノールを揮発させる。
ヒマワリのタネから搾油する

油脂なのかどうかはわからないが、少々ねっとりしたものが残った。ちなみに、揮発させている途中で、2/3くらい溢してしまった。
ヒマワリのタネから搾油する

一応、顔料を混ぜてみる。
ヒマワリのタネから搾油する

指で塗ってみた。
ヒマワリのタネから搾油する
どうなるかわはまだわからない。ヒマワリ油のリノール酸含有率は、気候に大きく影響されるようなので、ほとんどの場合乾性油としていいものが採れる可能性は低いと思われる。

| 絵画材料 | 10:39 PM | comments (2) | trackback (0) |
七輪で焼いた石灰岩で、漆喰塗りをしてみた【フレスコ画】
前回は、七輪で石灰岩を焼き、漆喰の材料である生石灰を作るところまで実行した。
■七輪で石灰岩を焼き、漆喰を作る【フレスコ画】
http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=1023

その後、生石灰を数日ほど水に浸けていたが、実際に壁やパネルに塗布して使えるのかどうか試してみることにした。

七輪で焼いた石灰岩で漆喰塗りをする

いざ使おうと思って、瓶から石灰の練り物を取り出したら、小さい石灰岩の塊がゴロゴロと混ざった状態だった。陶芸用の窯で焼いた場合は、完全に焼かれて、水に浸けてすぐに綺麗に崩壊したけれども、七輪焼きでは完璧にはいかなかったようである。古代の技法のように、数年間水に浸けておくと、ムラ無く細かくなったという可能性もあるかもしれないし、または水に浸けている間、よく攪拌した方がよかったのかもしれないが、たぶん焼き加減が最大の原因だろう。

砂を混ぜて、パネルに塗布。
七輪で焼いた石灰岩で漆喰塗りをする
水分が多すぎて、漆喰が緩くなったので、水平にして、セメント風に乾燥させることにした。
炭酸カルシウムなどの細かい体質顔料を混ぜると丁度よい練り加減になったかもしれないが、砂では粒が多すぎて水の多さを緩和できなかったか。砂が下に沈んでしまったが、今回はただの実験ということで多目にみよう。

2日後には、立派に乾燥していた。
七輪で焼いた石灰岩で漆喰塗りをする

焼き切れずに残った石灰岩が粒状になって、飛び出していたりなど、仕上がりに多少問題はあるけど、手近な道具で天然の石灰岩を焼き、水で消化し、漆喰として使うという一連の工程は繋がったので、学習的な試みとしては無事完了。

関連記事
石灰岩を灯油窯で焼く
http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=1020

| 絵画材料 | 09:48 AM | comments (0) | trackback (0) |

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