2014,11,22, Saturday
ラピスラズリという青い半貴石は世間一般でも有名ですが、かつてその石から複雑な手順で青い絵具を作り出していたということを知っている人は少ないと思います。西洋絵画では非常に重要な役割を果たしていましたが、石自体が遠くアフガニスタンからもたらされるもので稀少であり、且つ青い部分だけを取り出すのに手間がかかるので、大変高価な絵具となっていました。ラピスラズリは不純物を多く含んでおり、石を砕いただけでは、薄い空色ぐらいの色にしかならず、そこから青だけを取り出す技術が必要だったのです。今は合成で作られているので必要ない技術ですが、昔の青の価値は計り知れないものがありました。
青い部分だけ取り出した顔料をウルトラマリンと呼びます。今回の実験は、ラピスラズリからウルトラマリンを抽出する、ということになります。その抽出方法のひとつが、中世末期に書かれた、チェンニーニによる絵画技法書に記されているのですが、その方法をベースに抽出をやってみたいと思います。すでに複数の方がネットで公開されているので、この記事の希少価値は小さいと思いますが、私も参戦したいなという思いが以前からありまして。。。 主な参考資料は、「天然ウルトラマリンの抽出1」(平成十七年度共同研究報告) 金沢美術工芸大学紀要 50, 120-111, 2006-03-31です。 チェンニーニの方法によるラピスラズリ抽出について書かれておりますが、概要は上記の論文を読むのが一番だと思います。 以下よりダウンロードできます。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110004830201 その他、画家の鳥越氏が実行した際の様子がブログに公開されております。 http://torilogy.exblog.jp/tags/%E5%A4%A9%E7%84%B6%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%8A%BD%E5%87%BA/ で、ラピスラズリです。 もっと良いサンプルもあったのですが、あえて不純物の多そうなものを選びました。うまく青だけ取れるのか、見たいというのが主な目的ですし、慣れないうちに良い石を使うのももったいないので。 まずはラピスラズリをハンマー等で細かくしてゆきます。細かくする度に、青の部分が多いものを選んで、灰色の部分は除いてゆきます。 数ミリ大に細かくなったところで、乳鉢と乳棒に切り替えて進めます。 論文では磁器製の乳鉢では難しいとありましたが、少量を試すだけなので、磁器製乳棒、乳鉢で砕いてゆきます。 乳鉢を使って砕いているとわかりますが、綺麗に均一に砕けてくれるわけではありません。ときどきフルイにかけて、既に細かくなった顔料を選別します。そうしないと、細かく成りすぎて、色が弱くなってしますのです。 フィルターには、シルクスクリーン用の化繊布を使用しました。200メッシュです。 これをキャンバス用の木枠に張って、 上に粉砕した顔料を載せて揺すると、細かいものだけ下に落ちます。 ラピスラズリを挽いてはフィルターに通すという作業を、延々と繰り返すこと数時間。 こちらが、用意できたラピスラズリ粉末。5gです。 すっごい時間がかかりました。 やはり青の濃さに欠けていますが、これがしっかり青になってくれるかどうか、楽しみです。 次回はパテづくりです。 上記の論文では、松脂をロジンと解釈して進めていますが、当サイトの掲示板にて、かつてmiyabyo氏がバルサムではないかとコメントしており、確かにそちらの方が理にかなっていると思われるので、バルサムで実行してみます。 |
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