2016,08,11, Thursday
お盆休み的なものに突入するし、普段は読む気にならないような分厚い洋書の1冊でも読んでおかなければいけないような気がして、今回は以下に挑戦してみることにしました。
Jean H. Langenheim(著)”Plant Resins: Chemistry, Evolution, Ecology, and Ethnobotany”Timber Pr (2003/4/30) ハードカバー: 586ページでボリューム感がありますが、でも、絵画に使われている樹脂はある程度限られているので、必要な部分をピックアップして読んでいくわけですが、鳥越一穂氏と樹脂に関する動画を撮ろうと計画しているところなので、むしろパパパっと素早く目を通さねばならないのかもしれません。樹脂に使用に関しては、実際にいろいろ試しているので、それなりの経験に基づいて語れますが、それらの樹脂はいずれも遠い国から輸入されてきたものであって、実際どういう木から採れるものかというのをあまり知らないので、そういう点を整理しておきたいという気持ちが以前からあったのですが。 ひとまず、マスチック樹脂の項から読み始めました。我らがマスチックは、Pistacia lentiscusから採取される樹脂だそうですが、この木はウルシ科のカイノキ属。針葉樹の顕花植物で、常緑で雄雌異株(オスとメスで別れる)とあります。地中海全般に分布するようだが、中世に主にマスチック樹脂が採取されたのはキオス島のものだという。和名ではカイノキが最も近そうで、苗も売られているのですが、しかし落葉高木だったり、いろんな種類があって、頭を整理するのは大変そうです。 youtubeにはPistacia lentiscusの盆栽の映像が投稿されています。 木の形はウルシとは似てないけれども、葉の並び方はウルシタイプですね。Pistacia lentiscusの苗、日本で手に入るなら是非とも欲しいところです。 Pistacia lentiscusの動画らしきもの↓ Pistaciaという名前の通り、ピスタチオの実がなる樹木の仲間であるようである。ただし、お酒のつまみとしても食されるピスタチオの実が成るのはPiatacia veraという種類であり、マスチックの木の実の方は、ちょっと違うようである。 Piatacia veraの動画らしきもの↓ 話が逸れるけれども、興味深いのはテレビンノキとして知られるPistacia terebinthus。テレビンと言えば、カラマツ属、モミ属などの大きなマツ科の針葉樹から採取されるもというイメージが強いが、初期にはこのテレビンノキから採られていたものらしい。ふと気になって、チェンニーニがウルトラマリン抽出で試用していた松脂はどんなものかと思ってイタリア語の刊行版をあたってみたが、pinoの樹脂と書かれてあったので、これに関しては松から採られたのだろう。ちなみに、テレビンノキは旧約聖書に登場する。 Pistacia terebinthusの動画らしきもの↓ マスチック生産は、キオス島と言っても島の東南の角、Pistacia lentiscus Var. chiaが生い茂る箇所に限定されるようで、他の場所で採取されたものは、しっかり育った木から得たものでも質は劣るということである。ということは良質のものは供給量が限られるので、価格が高いのも仕方がないかもしれないし、絵画用のマスチック樹脂でも、質の良いもの、悪いものなど差があるのは、この辺にも起因するかもしれない。雄雌異株と書いたが、マスチック採取に使われるのは雄株の方で、雌株の樹脂は劣っている。さて、PLANT RESINSではこの後は実際の採取方法、用途や歴史などについて延々と述べられており、絵画用としては、リンシードオイル、揮発性のテレビン油などと混ぜてゼリー状のいわゆるメギルプを作るというところまで書かれてあり、興味は尽きないところですが、化学的な部分はなんだかんだで読むのが難しい。 |
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