コーパル樹脂について
このところ、ずっとコーパル樹脂のことを考えていました。ダンマルの名称、原産樹木なども問題も複雑で、混乱の元となっているとはよく言われますが、コーパルよりはずっとマシであると言えるでしょう。コーパルという名称は、現在のメキシコあたりの原住民が使用していたコパリという言葉がスペイン人を介してもたらされたという話です。現地人にとっては樹脂全般を意味する言葉で、現代のような植物の分類もなく、自分たちの土地の樹木の樹脂をそう呼んでいたのでしょう。これはdamarという言葉が、東南アジアの現地人の間で樹脂全般の意味で使われていたのと共通しています。「コーパル」はやがて、国際市場では硬質で融点が高い樹脂を示す用法が定着しますが、どのような変遷をたどってそこに至ったかははっきりしないようです。名称の由来は中南米で、産地として有名だったのはアフリカ、しかし現在使用されているのは東南アジアという経緯があったと考えると、地域の違いや、樹木の種類の違いも大きく、さらに、地面から掘り出されるものと、生きている樹木からタッピングで採られるものがあり、その違い、主に経年による変化かと思いますが、それも含めると、コーパルは性質や特徴が幅が非常に広い材料だといえるでしょう。ダンマルは東南アジアが舞台であり、タッピングで採取されるものに絞られますから、コーパルと比較すると、まだわかりやすい部類だと思います。

現在、絵画用に使われているのは、東南アジアのマニラコーパル、しかも生きている樹木からタッピングで採取されるものだそうなので、それだけをカバーしていればいいとも言えますが、かつて絵画技法書などで論じられたのは、おそらくアフリカ産のコーパルのことだと思います。ヨーロッパが植民地支配していた頃の話ですが、アフリカの各種コーパルは、現在のマニラコーパルよりも硬質で融点も高く、ニス用途に優れていたと思われます。絵画に使われている天然樹脂の中では、ダンマルが最も広範囲に調合画用液に使われていると思いますが、最も人気のある樹脂はコーパルなんじゃないでしょうか。ルフラン社の画用液にも含まれているものが多く、やはりそれはアフリカのコーパルを使っていた頃からの伝統なのではないか、という気もします。どの時期にアフリカのコーパルを多用していたかというのは、気になるところです。この辺はまだあまり知らべていないので、まだまだ語るには時期尚早なのですが。

コーパルといえば、琥珀に至ってはいない段階の半化石樹脂ともいわれていますが、東南アジアのコーパルはかつては、地面から取るものもあったものの、今は生きている樹木から取っているということで、この半化石樹脂という定義は必ずしも当てはまらないようです。コーパルの説明では、生きている樹木から取るが、地面に埋まっているものを取ることもあるという記述をよく見かけますが、少なくとも半化石樹脂というものになるには、相当な年月が必要で、森の生態系が変わったり、森そのものすら無くなって久しい的な状況ではないとおかしんのではないか、という気がしていました。地面から採取方法はアフリカ各地や他の地域でも、だいたいは先を金属で強化した棒で地面を引っかいて集めるぐらいの記述であり、その深さも1メーターということもあれば、たった数センチというのもあって、不思議に思っていましたが、最近読んでいるPLANT RESINSによれば、ザンジバルコーパルに次いで硬質だと言われるコンゴコーパルもおそらく半化石化に必要な年齢(5000-40000年)に到達していないかもしれないと述べています。コンゴコーパルですら半化石樹脂でなければ、厳密に半化石樹脂とされるものは、コーパルの中でも一部のものに限られるのではないか、という気がします。マダガスカルコーパルにおいては、半化石樹脂として売られていたものを調べてみたところ、50年ほどしか経過していないものだったという例もあったとか。

アフリカのコーパルについていろいろ話たいことはあるのですが、それは控えるとして、現在入手可能な東南アジアのコーパルに限ると、フィリピンのマニラコーパルと他にニュージーランド北部のカウリコーパルがあるそうですが、販売されているものを購入してみました。
コーパルカウリ
商品説明には、化石樹脂と記述されておりましたので、そうだとしたら、なかなか稀少な製品かと思います。

そして、ランニングアンバーも販売されていましたので、注文してみました。
ランニングアンバー

カウリコーパルは実際に使用するかどうか(というより使用できるのか)は今のところわかりませんが、ランニングアンバーであれば、テレピンに溶解するのならば、すぐにでも画用液として使用可能なので、近々試してみたいかと思います。絵画用のアンバー画用液も売られているのですが、価格が高すぎて試せなかったということもあって、楽しみです。

| 絵画材料 | 10:12 PM | comments (0) | trackback (0) |










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