2009,04,14, Tuesday
前回からの続き。
「石灰とチーズで膠をつくる」と書くと、漆喰などのイメージから、石灰の硬化によって固まると思われてしまう可能性がなきにしもあらずな気がするが、基本的にはチーズ膠はカゼインによって接着するもので、石灰はまずタンパク質(カゼイン)分解するアルカリとしての役割が主であり、石灰の硬化は全く無関係とは言わないけど、ほとんど関係ない要素ではなかろうかと。チェンニーニの場合も石灰を少量加えるとしか書いていない。べつに石灰でなくても、灰汁やアンモニア水でもいいのかもしれない。しかし、その前に、チーズをアルカリで溶かさずに接着することはできるのか試してみたい。チーズを食器についたままにしておくと落とすのに手こずるが、平滑な磁器でさえ大変なのだから、板を接着した相当接着力があるだろうなと思うわけで、試しにチーズに何も手を加えず接着してみることにした。最初に実験に使ったのはカマンベールチーズである。内側の柔らかい部分はかなりの粘りがあって、いかにも接着剤として機能しそうであり、またどこのスーパーでも簡単に買えるということで。 カマンベールチーズの内側の柔らかい部分を板に塗る。 2枚の板を貼り合わせる。 一晩放置する。 素手で剥がそうとするも、ビクともしない。 ハンマーで叩く、コンクリートの床に何度も打ちつける等の無茶をやっても、剥がれる様子はなかった。びっくりするほどの接着性である。 次にカッテージチーズ(うらごし)を使って接着してみた。カマンベールと比べると、かなりあっさりしているので、少々不安である。 一応、接着されて、一見強力に接合されているようだったが、床に落っことしたら割れてしまった。 水分が足りずに、ぼさぼさの状態で貼り合わせたからかもしれないと思い、水でよく溶いて再度試みた。 ヨーグルトっぽくなったものを板に塗布。 今度はしっかり接着されている。力一杯剥がそうと試みるも素手では無理だった。 コンクリートに何度も打ち付けていたら、さすがに剥がれてしまった。 なお、アルカリで溶解したサンプルも用意しており、そっちはコンクリート壁強打でも剥がれることなく強力に接着されていた。 まだ検証として充分ではないが、結果から予測するに、カッテージチーズだけでも接着可能であるが、アルカリで溶かしたものに比べて接着力は劣るようである、ということが言えそうだし、溶かしてあればとろりとして塗り具合もよいということは確かである。が、それとは別に、カマンベールの接着力は尋常ではなく、何も手を加えない状態で強力に固まった。カマンベールの場合、熟成の過程で白カビがカゼインを分解するので、ちょうど石灰やアンモニアを加えた状況と同じことが起こっているのかもしれない。ちなみに、日本で売られているカマンベールは熟成の途中で殺菌処理されるが、本物のカマンベールの場合、特に熟成し過ぎたものはどろりと溶けたような状態になり、強いアンモニア臭がする、という話である。 |
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