2009,01,30, Friday
耐酸、耐アルカリ、非常に安定、吸油量が小さいために油性塗料その他の体質顔料として評判のよろしいブランフィクス(重晶石)を混ぜつつ、シルバーホワイトを練ってみる。最近、下地作りの行程で、厚めのシルバーホワイトで盛り上げしたりなどしているので、それに適した白が欲しいと思ったもので。
日本では人工製の沈降性硫酸バリウムは簡単に手にはいるけど、天然の重晶石から得るバライト粉はなかなか注文先が見つからなかったので、海外のネット画材店で注文してみることに。私はNaturalPigmentsを利用したけど、クレマーピグメントとかでも扱っとりますね。ちなみに、日本では試薬として取り扱っている薬剤メーカーもあるのだけど、在庫無しの回答が来ただけだった。というよりも、まさか注文があるとは全く思ってなかったような反応。 そのようなわけで、届いたものは↓也。 人工と天然ってどうやって見分けるんすかね。気が付いた点としては、沈降性硫酸バリウムは粒子が細かく、けっこう粉が飛び散るのに対して、バライタ粉はドサッと重みがあるよううな感じで、その辺に違いとして現われている(ような気がしないでもない)。と言っても、沈降性硫酸バリウムもけっこう高比重だからそんな変わるものでもないか。 絵具作りであるが、使用目的が制作初期段階のインパストなので、展色材にはサンシックンドした亜麻仁油と、樹脂や蜜蝋を混ぜた特製メディウムを使用。シルバーホワイト7にバライト3ぐらいで練ってみる。 天然バライト粉とか混ぜると、多少練るのが大変かもと予想していたが、実際には鉛白単体を練るときよりずっと楽になった気がする(鉛白はホルベインのシルバーホワイト)。使用目的からして、あまり丁寧な練りはせずにほどほどの手間で妥協しつつ、少し多めに作っておこうと思ったので、それなりに適当な感じで。 俵屋工房の乳棒型練り棒を使用。ある程度練った後、練り板上に薄く絵具を広げたあと、錐を使う見たいに両手でくるくる回転させると、短時間で練り上がることに気付く。 なお、バリウムだけを展色材で練ったらしいチューブ絵具も買っていたりする。写真参照。鉛白を亜麻仁油で練ったセリューズ(普通のシルバーホワイトはサフラワーかポピー)もあるので、これらを混ぜても同じかもしれぬ。 |
2009,01,29, Thursday
鉛白は鉛を酢の蒸気に晒す方法で古代から人工的に製造されており、鉛白と言えば昔から人工物という感じだけれど、白鉛鉱という鉱物を砕いた天然の鉛白(炭酸鉛?)もある。白鉛鉱原石はヤフオクなんかでも簡単に手に入るが、透明な結晶になっているものが多いので、これを砕いたとしてもシルバーホワイトみたいな被覆力のある油絵具になるとは思えないんすけど。
それはともかくも↓な感じで絵画用顔料が売られているのを発見。試しに購入してみた。 http://naturalpigments.com/detail.asp?PRODUCT_ID=470-10S ※顔料の性質について詳細は上記サイトの説明文にも書かれているのでご参照を~。 なお、白鉛鉱と鉛白の関係は↓下記のサイトがわかりやすくまとめられているかも。 http://www.ne.jp/asahi/lapis/fluorite/gallery7/525ceruss.html で、届いたものが↓これっす。ラベルには確かに”cerussite”って書いてある。 見た感じはほとんど白色だけど、微妙に黄色っぽい。比重が大きいのか、練り板の上にドサッと置いても飛び散ったりしないのが鉛っぽい(鉛は重い)。 で、さっそく油で練ってみる。顔料はかなり粗くて、岩絵具を練っているみたいである。 ちなみに展色材は、亜麻仁油を中心にいろんなものを調合した、多少色の濃いやつ。 これは・・・、屈折率的に体質顔料並かもしれん。 石膏、あるいは白亜を亜麻仁油で練ったときのような色になってしまった。しかし、もともと微妙に黄色っぽい感じだったので、その辺の色味が強調されただけかもしれない。天然鉱物は不純物などで色がついてたりするものが多いし。まぁ、実際に使用して、他の絵具と混色などしてみないことには、ちゃんとした屈折率があるかどうかはわからんが、とりあえず練った絵具をしばらく熟成させたいので、また後日と言うことで。 |
2009,01,24, Saturday
ラングレ(著)『油彩画の技法』のラベンダー精油とアスピック(スパイクラベンダー)精油は別項になっており、ランベダー精油の箇所においては「・・・普通のラベンダー精油、あるいは雌ラベンダー精油は、アスピック精油(雄ラベンダー精油)よりも品質が落ちると考えられている。いまでは陶器の絵付けにしか用いられなくなった。古い技法書の中に、アスピック精油ほど頻繁には出てこない。自分では試してみなかった。」と閉められている。
「普通のラベンダー精油」って言っても品質にかなりバラツキがありそうだけれども、ともかくも試しにランベダーオイルとやらを使ってみることに。まずは、ラベンダーオイルの入手だけれども、今回は飽くまで試しにやってみるということで、ヤフオクで2本50円で落札したものを使用。って、いきなりヤバな感じだけど、まぁ、とりあえずやってみて、後日ちゃんとした反復実験を(誰かが)行なうということで。なお、アスピック油はホルベインのスパイクラベンダーオイルを使用。 まずは、普通に油絵具に混ぜて塗布してみる。ラベンダー油を多めに混ぜたものと、ほどほどのもの、さらに比較の為にスパイク油によるサンプルも同様に2種塗布。 で、2日後に様子を見てみたが、もともと多めの揮発油で溶いた絵具は、定着がよくないのだけれども、ラベンダーオイルの方は、指で強めに触れると、指に絵具がかなり付いてくる。スパイク油はそうでもない。 次に、樹脂の溶解力を調べるために、小瓶にラベンダー油とダンマー樹脂片を入れて観察。比較の為にスパイク油のサンプルも作成。 で、一昼夜放置した後の様子が以下の写真。 スパイクオイルでは樹脂が綺麗に溶解しているが、ラベンダーオイルでは樹脂の表面が白濁しているだけである。 (注)さらっと試しただけなので、実験結果をそのまま鵜呑みにしないようにお願いします。 |
2009,01,01, Thursday
酸性のガスによって、ウルトラマリンが退色したりする現象を無理再現する実験の続き。
まずは、前回の実験を参照ください。 http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=501 前回の実験に比べて特に目新しいことはないが、あれからだいぶ経って、目に見えてわかるような写真が撮れたので、以下に掲載する。 実験の手順は、まず、小さな板にアクリルジェッソを塗り、試験するウルトラマリン絵具を塗る。ガラス容器に酢酸またはワインビネガー、あるいはレモン汁を注ぎ、直接サンプルが触れないように、陶器等を置いた上にサンプルを置きフタをする。あとはときどきサンプルの変化を観察する。 というわけで、まずはサンプルの試験前写真。 今回は比較の為にセルリアンブルーも参加。 で、先に説明したとおりの方法でガラス容器に入れる。 3ヶ月ぐらい経ったあとに、取り出したら以下のようになっていた。 あきらかに退色と黒変が見られる。ただし、ガラス容器を屋外に置いてたら、外気の温度変化によるものか、容器内の湿度が上がって、酸性のガスに触れさせるというよりは、もはや酸性の液体に浸したといっていいくらいに、サンプルに水滴が付いていた。いや、水滴というより、びっしょり濡れているという感じだった。フタに小さな穴を開けておくべきだったか。部屋に置いておいて、硫化水素ガスが発生して死んでたりしたらどうしよう、なんて心配して外に置いてたんですな、小心者で。そんなわけで、たぶん、液体が溜まっているところが退色、黒変したのかも。 それと、これまでは油絵具のみの試験だったけれども、水性の材料はどんな感じになるだろうかと思い、水彩絵具、ガッシュ、アクリル絵具の3点も試してみることに。 予想では、最も顔料の露出しているガッシュがいち早く影響を受け、次にガッシュよりもアラビアゴム濃度の高い水彩絵具、最後にアクリル絵具の順になるだろうと思っていた。 試験を始めたはいいものの、その後、すっかり他のことに気を取られて、観察するのを完全に忘れていた。無念。。。さらに、試験前の写真撮影まで忘れていたらしい。2ヶ月ぐらい経った頃か、試験したサンプルを取り出してみると、3種ともすっかり消え去ってしまっていた。油絵具ではこれほどあっさり消えるということはないので、油の膜に包まれているというのは、大気から防御としてやはり心強いと言える。とはいえ、極端な実験なので、実際の保存性の参考になるかどうかはわからないけど。 |
↑上に戻る↑ :