2012,11,10, Saturday
先日、絵具メーカーのクサカベさんの工場見学に行って参りました。古吉弘先生始め、画家の方々、画材研究をしている美大生など、精鋭揃いで訪問致しました。ご参加頂いたメンバーですが、ホームページをお持ちの方々のみ、紹介させていただきます。
古吉弘先生 http://www.geocities.jp/paintingsfuruyoshi/ 小林聡一先生 http://soichi-kobayashi.com/ 疋田正章先生 http://www.masaakihikida.com/ 中村圭吾先生 http://www.s-art-web.com/artist/nakamurakeigo/top.html 美大在学で絵具研究をしている高森幸雄君 http://www.yukio-takamori.com 彫刻家花田麗様 http://www.zokei.net/friends_gallery/gallery/18_hanada/index.htm 西川ケイコさんとその一派 http://art-b.net/ もっと広く告知して参加者を募ろうかとも思っていたのですが、絵具作り講習も受講したかった為、mixi等限られたところで集めまして、参加したかったのに行けなかった方は誠に申し訳ございません。後日、別の機会に何か催し事を開催したいと思いますので、よろしくお願い致します。 では、記憶が薄れないうちに自分用のメモも兼ねて、レポート致したいと思います。 基本的に断りのない限りは油絵具の話だと思ってください。 クサカベ様本社及び工場(埼玉県朝霞市)です。 まず案内して頂きましたのは、油とステアリン酸を混ぜるお部屋です。 顔料と油のみでは分離しやすいので、油にステアリン酸を添加します。ステアリン酸は70℃以上で溶解するので、上のような機械で加熱して混ぜます。顔料によって適切なステアリン酸の量が異なり、数種類の混入量のステアリン酸を加えた媒材が用意されていました。 傾向としては、軽い顔料にはステアリン酸を多く、重い顔料にはステアリン酸が少なく、となるようです。似たような役割のものに蜜蝋がありますが、絵具の質感を変えるので、より油と近いステアリン酸を使用するそうです。 こちらは体質顔料。 白い方が炭酸カルシウム、茶色い方はアルミナホワイトです。既に乾性油と錬られてあります。アルミナホワイトは炭カルに比べて透明度が高いので、乾性油(リンシードオイル)の色の影響を受けて、茶色に見えます。 体質顔料としては、炭酸カルシウムの方が主に使われているということです。ムードンや沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムなど、我々が普段使っているものは酸に溶ける可能性があるので、体質顔料用の炭酸カルシウムを使用するとのこと。これは体質顔料という名前で売っているそうです。アルミナホワイトは粘りが強いので好まれないようです。 こちらはミキサー これで乾性油と顔料を混ぜ合わせます。下に見えるのが混ぜた状態です。粗練り工程ですので、まだ艶や滑らかさはありません。次のロールミルで丁寧な練りの工程を経ると、艶のある油絵具になります。 みなさんもおそらくご存じかと思われますが、3本ロールミルです。 顔料は寄り集まってダマになっているので、これをときほぐさなければなりません。3本のミルの間は、ほとんど隙間がなく、そこを通り抜けることによって、粗練り時の粉の塊がときほぐれ、綺麗に分散されて、滑らかで艶のある絵具になります。 ロールミルの素材ですが、通常鉄製を使用するのですが、鉄よりも固い顔料も多く、そちらには石製(御影石)やセラミック製のミルを使用、ただし、石製は現在は生産されていないので珍しいそうです。セラミック製は石より滑るようですが、石製が生産されていないので、現在はこちらを使うそうです。 次に品質管理のお部屋に案内して頂きました。 ミルで錬られた絵具、練り、固さ、色合いなどをチェックするところです。錬ったものから引き算はできないので、足し算で調整していきます。色合いを調整する際は同質の原料で調整するそうです(カドミウムイエローならカドミウム系で)。厳密に同じ色は作れないそうです。私は天然の土性顔料などがロットで色が違ったりするだろうという点に注目していたので、その点を質問してみましたが、そもそも天然顔料を使用しているという絵具、たとえば、イエローオーカーなどの土性顔料は、顔料番号等で天然を表わしていたとしても、100%天然ということはまずないそうです。というのも、絵具メーカーさんが原料を入手する時点で、人工の酸化鉄等が含まれているそうです。土系は輸入であり、外人は平気で嘘を付くので、天然という話を容易に鵜呑みにしてはならないそうで。これは思い当たることが沢山あります。なお、炭酸カルシウムや白亜は100%天然だそうです。 アイボリーブラックは牛骨を使用していたが、狂牛病の影響で入手困難になり、現在国産を使用しているけれども、供給等に関して不安なところも多いようです。カドミウムレッドは、かつては産業用に広範囲に使われていたと思うのですが、現在は絵具用ぐらいにしか用途がなくなってきているようで、原料自体はアメリカにある1社しか製造しておらず、そこが止めたら全世界的に廃盤になる可能性も。 なお、錬った絵具は熟成させます。熟成は基本的にただ寝かすだけのようです。よりしっとりした艶が出ます。水彩絵具は水分がとんで固化することもあるので、熟成工程はないとのこと。 こちらはチューブに絵具を詰める機械です。 次に絵具づくり実習です。今回の参加者の方々は、実は絵具の手練りに関しては、長年の経験をお持ちの方が多かったのですが、それでもたいへん勉強になりました。 まず、絵具の原料をいろいろと見せて頂きました。 これはラピスラズリです。私のモノよりも超デカくて色が濃かったです。 確か、11万円で購入されたとおっしゃておりました。 他にもドラゴンズブラッドも見せていただきましたが、これも私がこの前買った塊よりずっと大きくて迫力がありました。 ステアリン酸の混入された油を使って、顔料を練りました。 今回の参加者の多くが、ミノー絵具を愛用されている傾向がありまして、その件に関する質問が多くありました。 クサカベ絵具とミノー絵具の大きな違いですが、まず、ミノーにはスタンドオイルが含まれているそうです。これまで大きな差は体質顔料の量かと思っていましたが、いろいろ絵具の性質などを差別化を計る上で結果的にやはりミノーの方が体質顔料は少なくなるようです。ミノー絵具のシルバーホワイトがたいへん軟らかくねっとりしており、とても使いやすいのですが、何が含まれてこのような質感になるのか、たいへん話題になっているのですが、その点に関してはいろいろとヒントを頂きましたが、やはり企業秘密ということでした。 それと、前々から気になっていたことがあるんですが、昔、私が油を描き始めた頃は、絵具の乾燥が今よりもっとずっと遅かったような記憶があるんですよね。最初に油絵具を使ったときは、その乾燥の遅さに驚いたもので、数日たってもキャンバスの絵具が動きまくるような感じで、本当に乾燥するのだろうかと不安になるくらいだったのです。絵具の使い方がわかってきて、多少厚く塗ってもそこそこの速さで乾燥するようになったのかなとも思っていたんですが、実は、現在市販されている油絵具は昔よりも乾燥が速くなるように作られているそうです。乾燥に1週間かかるとクレームが酷いそうで。乾燥が速くなるのはいいことかもしれませんが、それによって失われるものもありそうな気がしないでもないです。当サイトの掲示板でも、乾燥を速くするにはどうするかという質問は度々ありますが、乾燥が遅いことによる利点を説いたり、乾燥が遅いことによるウェットインウェットの技法が、かえって作品の制作速度を高めることもあるという話をするようにしています。 以上です。間違った記述が御座いましたら訂正致しますのでご連絡ください。また、参加メンバーの方々で、他に追記したい内容が御座いましたら、コメント欄にご記入ください。 最後に、素晴らしい講習を提供していただいたクサカベ様に御礼申し上げます。 ※問題のある記述、写真等ありましたら、削除いたします。 |
2012,08,25, Saturday
前回、スオウとコチニールをアルコールで抽出したところまでを書いたけれども・・・、
■スオウ及びコチニールをアルコール抽出してみる http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=1107 2日ほど過ぎて、スオウの瓶の方も液が随分赤く、というかドス黒くなってきたので、両者ともフィルターを通して残留物を取り除いた。 スオウとコチニールは色素としての役割しかないであろうから、ニスの本体として、シェラックフレークを溶かすことに。 重量比で、シェラック20g+コーパル10gに対し、スオウで色づけしたエタノール40g、コチニールで色づけしたエタノール50gを投入。 よく振って、シェラックとコーパルを溶かす。 シェラックの方は数時間ほどで、コーパルも1日経過すると、だいたい溶解している。今回は試験的に消毒用エタノールを使用しているけど、無水アルコールなら、もっと綺麗に溶けてくれるであろう。コーパルはゴミが付いているので、本当はフィルターを通したいところだけれども、今回は省略。振ったときの泡がとっても赤い。 では、さっそく何か木工品に塗布してみるとして、理想としては木目の綺麗なちょっと高級な板に塗るべきなのだけれども、実習利用時の予算的都合を考慮して、安くて、サイズの小さなものを選択。 ↓これ「木彫印かん小箱ミニ(しな材)」 http://item.rakuten.co.jp/bicosya/30024/ 彫刻刀等で木彫してから彩色したりニスを塗ったりして仕上げる教材で、定価¥380(実売はもっと安い)。 たんぽで塗るか、刷毛で塗るか、微妙なところである。とりあえず、刷毛で塗ってみよう。 刷毛塗りの場合、ニスが飛び散ると被害が甚大なのでご注意ください。大きなダンボール箱の中などで塗るといいかと。 一回目の塗りでこんな色に。 このニスは紙に塗ると、コチニール的なピンク色になるのだけれど、木に塗るとオレンジ色になるんですな。木材の色が影響しているということか。スオウが入っていなければ、もっと赤かったかもしれない。または、シェラックの色も影響しているかもしれない。なお、横山進一著『ストラディヴァリウス』には「・・・赤い色にちなんだ銘を持つストラディバリウスが数本ある。だが、つくられてから二五〇年、三〇〇年経った現在それらを見ても、赤に見えることはない」という件があり、麒麟血の経年変化ではないかと予想されている。スオウは著しく耐光性が悪いので、スオウで塗ったら尚更早くニスの色の変化が体感できるかもしれない。 本来は、しっかり時間をおいてから次の層を塗った方がよかれと思うけれども、実習で採用する場合は、時間的な都合で難しいであろうから、適当な頃合いを計りつつ、2時間弱の内に3層塗ってみた。アルコールの揮発にはそれほど時間はかからないので、塗ろうと思えば、もっと塗れなくもない。とくに最初の内は木材に吸い込まれる分もあってか、わりと早いペースで次を塗布できるかも。 というわけで、3層塗って以下のような状態に。 ちょっと光沢がでてきている。時間に余裕がない場合は、これで終わりでもいいかもしれない。 その後、乾燥期間など全く考慮せずに、アルコール分が揮発したかと思われるタイミングに合わせてどんどんニスを重ね、十数回塗ってみた。 色に深みが出てきたような気がしないでもない。木目が綺麗な素材だったら、けっこう見栄えがしたかも。 |
2012,07,18, Wednesday
繊維を漉いて和紙を作る、というのを今まで未体験だったので、材料を購入するなどして、この度、挑戦してみました。全く目新しいことでもなんでもなくて、単に自分がやってみたというメモ程度の話なので、その点はご了承ください。
実は昨年から、和紙の原料として知られる楮(こうぞ)を植えていて、しかし、台風で倒壊したり、変な形に育ったりとなかなか順調に進んでいないような話を度々書き込んでたりしていけれども、それに加えて楮から紙原料の繊維を作るには、蒸したりなんだり、いろいろ工程があって、ちょっと面倒臭いというか、そもそも楮は植物を眺めてみたいというだけで植えたようなものであり、これで紙を作ろうという野望を持っていたわけではなかったわけで、紙漉きを行なうにあたっては、以下のものを購入しました。 紙原料(こうぞ) 未晒【工芸/紙すき】 http://item.rakuten.co.jp/bicosya/37006/ 学校用教材で知られる(株)アーテックさんの商品。最近は学校用教材もネットショップで1個から注文できたりするので、試しにいろいろ使ってみると、とっても面白いです。 80gで1,280円(税込)。 相場を知らないので、高いか安いかはわからないけれども、実際やってみてわかったけれども、1人で試しにやってみるという分には、むしろ多いかもしれないというぐらいの量なので、これで充分です。 それと同じく(株)アーテックの「手すき枠 A(ハガキ判)」も買っておいた。 http://item.rakuten.co.jp/bicosya/37000/ こちらも620円と、わりと安め設定と言えるでしょう。 ちょっとしたペラの説明書がついてきた他には、使い方の詳しいマニュアルみたいなのはなかったので、商品ページの解説などを主に参照して、わりといい加減な感じで始めてみることにする。もっと下調べしてからやった方がいいとは思うが、半分調べて実行してから、再びよく調べて再挑戦する方が、事の進みが早いし、良い経験になると思っているので、今回も中途半端な状態でスタートしている点はご了承下さい。 1日くらい水に浸けてほぐすといいように書かれていたので、まずはパットに水2リットルくらいと入れ、そこにコウゾ原料を30g入れてみた。 特にこの量に深い意味はないです。 1日浸けてはみたものの、手でほぐしたり、かき混ぜたりしただけでは、なかなか解れない。 というわけで、ミキサーで粉砕。 いじっていて、徐々にわかってきたけれども、濃度は薄目の方が紙を漉きやすいようである気がしてきたので、さらにもっと大きな容器に水をいっぱい入れて、原料の一部を投入。 紙原料に付属の「粉末糊剤」をほんの少量お湯で溶いて入れると、繊維が均等に分散してくれるので、この状態で紙を漉くわけである。糊は紙を作るための固定剤ではなくて、単に分散させる為のものらしく、ほんの少量入れるだけである。 いよいよ手すき枠で、紙を漉いてみる。 で、漉いた紙を板に張って乾燥させたりするのだけれども、適当な板が見あたらない、安いベニヤだとヤニが付きそうだと思ったので、窓ガラスにベタッと貼付けた。 数時間後、乾いたところで、ベリっと剥がす。繊維がしっかりと絡み合っているので、破れるということはあまりない。 というわけで、紙が完成してくれました。 30g使っただけで、葉書大だとかなり枚数ができたということで、個人でやる分には充分な量かと思われるので、試しにやってみたい人にはお勧めの製品かと思います。 |
2012,07,12, Thursday
昨年秋植えしたウォードは先日種を採取した件をブログに投稿したけれども、既に本体や葉は枯れて失われている。
春に植えたものは、現在、丁度よく生い茂っているので、これで染色を試みてみようかと思う。 染料としてウォードを使うのは初めて、というか、これがウォードなのかも確信がない状態であり、これを使って青色に染めてようやく確認できるというところである。タデアイはちょっと傷が付いただけでも、その部分が青くなったりして、インディカンをいっぱい含んでいるような様子が見られるのだが、ウォードはいつも緑色で、まじまじと見つめてもただの緑の葉っぱにしか見えないというのが、多少気になるところである。 なお、いくつかのWebページで、ウォードには毒性があると記述されている。 http://www.ntyk.net/yasai/2065.html 毒性と言っても様々なレベルがあるので、Webの記述だけではどんなものかはよくわからない。アブラナ科であるから、たまに言われるように花が毒であるとか、インディコに対して毒と言っているのかもしれない。Wikipedia(英語)では、抗癌作用のある成分が多く含まれているというポジティブ面が書かれているが、健康に対するマイナス面については何もない。一応、同様の行為を行なう人は注意した方がいいでしょうと注意喚起しつつ、個人的には無視して進むことにする。 さて、ウォードであるが、染色には葉の部分を使うそうだけれども、発酵等の手順が必要な点はタデアイと同じみたいである。しかし、まずは、手短な方法で、本当に青く染まるのかどうか確認してみたいところなので、タデアイで何度か試みた「生葉染め」を、このウォードの葉でやってみたい。 というわけで、ウォードの葉をちぎり取る。 若い葉と、大きく育った葉のどちらが有効かという点も気になったが、とりあえず大きな葉を集めてみた。 葉をミキサーに詰めて、適量の水を入れる。 ミキサーで粉砕、 染液を作ったところ。 葉のカスを取り除くために、ステンレス網で濾している。 予め用意しておいた絹(シルク)の布を染液に浸ける。 なお、生葉染めなので、布は動物性のもの(シルクやウール)を使用し、事前に、少量の洗剤を入れた熱い湯で洗っておいた。 落とし蓋をして、しばらく染液に浸しておく。 布はすっかり緑色になっている。 これを空気に触れさせて、青く変われば成功である。 洗ってみたら、ちょっと青くなってて、これはいけそうな予感がする。 干す。 完成 タデアイのときよりだいぶ薄い青になったけれども、それは予想通りというか、文献等で言われている通りである。 というわけで、ウォードの栽培、染色、種収穫までをなんとか実行できました。 |
2012,04,05, Thursday
テオフィルスの技能書に書かれている膠の作り方は以下の通りである。
--引用開始-- 生皮および牡鹿の角の膠について これが注意深く乾かされたならば、同じ生皮の同様に乾かされた切片をとり、こまかく刻め。そして鍛工の鎚で鉄床の上でこなごなに砕かれた牡鹿の角をとり、新しい壺の中にその半ばになるまで(刻んだ生皮と)配合し、それを水で満たせ。こうして、しかし少なくとも沸騰しないようにしながら、その水の三分の一が煮つめられるまで、火にかけよ。そして汝は次のように試せ。即ち汝の指をこの水で濡らし、指が冷えた時、もし粘着するならば、膠はよい。しかしもしそうでなければ、〔指が〕互いに粘着するまで煮よ。その上でこの膠をきれいな容器に注ぎ、そして再び壺に水を満たして前のように煮よ。このように汝は四度まで続けよ。『さまざまの技能について』中央公論美術出版より --引用終わり-- というわけで、牝鹿の角と、生の皮を煮て膠を作ってみたいと思ったわけであるが、それらの材料のうち、生皮を煮ると膠ができるということに関しては、既に充分納得しているので問題ないが、角で膠ができるのだろうかというところが気にならないでもないので、まずは予備実験的に、角だけを煮て膠ができるかを試してみたい。 牝鹿の角はないが、手元に羊の角があるので、これを煮てみよう。 なお、テオフィルスは角をこなごなに砕いてと記しているが、私の羊の角は、巨大ハンマーを振り下ろしても傷一つ付かなかったので、「アラカン」というカンナのような削り道具を使って、削り節状態にした。 これを一人用グリル鍋で、弱火で煮る。 結果であるが、ゼラチンらしきものが出てくる気配は全くなかった。 写真は冷えた状態であるが、普通の水の用であり、ゼリーみたいにゲル化する兆候は全くない。接着力もない。 始め数十分、弱火で熱して結果が出なかったので、強火にしたり、水を追加したりなど、数時間にわたって試行錯誤したが、失敗であった。 鹿の角を煮て作った膠というのが、漢方薬として売られているので、鹿の角であればいけるのかもしれない。当方、日本画の材料に普段からそれほど慣れ親しんでいないのだけれども、日本画で使用される鹿膠は皮から得るのかと思っていたのだが、角が使われているのだろうか?(ちょっと調べただけでは鹿のどの部位を使っているのかまでは書かれていなかった)。 テオフィルスは牝鹿の角と、何か生の皮を煮て膠を作っているが、角と皮の両方を煮るというのは、洋の東西を問わず、そのような方法も行なわれたようであるので、もうちょっと角を煮るということに関して試してみたいところである。 なお、些細なことでもいいので、何かアドバイスありましたら、コメント欄に投稿頂けると幸いです。 |
2012,02,27, Monday
さ・え・ら書房「人間の知恵」という児童向け図書のシリーズを読んでいたのだけれども、これがなかなか勉強になる。時に目から鱗というか、物事に対してまだまだ基本的な知識すら身に付いていなかったのだなと認識させられる。単なる説明のみでなく、歴史上どのような方法が行なわれてきたかという点に多くのページが割かれているのだけれど、結果を説明されるよりも、発展や発明の過程を順に追っていく方が理解しやすい。歴史書みたいな感じになっている点で、読み物としても面白くなっている気がする。
目を通したものをざっと挙げてみると、まず、『紙のはなし』は、紙とはいったい何か、どのように作るのか、どのように作ってきたのか等、紙について書かれたもので、私が読んだ中では一番すっきりまとまっている。『あかりのはなし』、一見画材と無関係のようにも見えるが、ちょっとは関係ある。震災のときに長いこと停電になって気が付いたけれども、蛍光灯などの現代の照明がないと夜はほとんどの作業ができず、朝になるのをじっと待つような感じであって、蛍光灯にいろいろと不満のある制作者は多いと思うけど、なんだかんだで基本的には現代の照明は素晴らし過ぎるものでありますな。『せんたくのはなし』、せんたくの話は言い換えれば、アルカリの話であり、どのようなものからアルカリを得たのかという話でもある。『ガラスのはなし』などに目を通してみたが、限られた字数に非常にスマートに概要がまとめられており、『ガラスの技術史』(黒川高明)のような本を読む時間がなければ、こちらの本でもいいかもしれない。 そして、『鉄のはなし』に感化され、鉄鉱石から鉄を作るまでをやってみたいと思ったりして、特に深い考えがあったわけだけはないけれども、手元にある赤鉄鉱(左)と黄鉄鉱(右)を灯油式窯にて800℃で焼いてみた。 ↓ ↓ 黄鉄鉱は亜硫酸ガス(二酸化硫黄)を放出して、赤鉄鉱的なもの、赤い酸化鉄、弁柄などと呼ばれるものに変化した模様。黄鉄鉱は鉄の素材としてはあまり価値はないようである。訳も分からずいきなり熱してみただけだけれども、後日いろいろ下調べした上で実行し、最終的にまとめてみたいと思う。 |
2012,02,17, Friday
以前、PVA糊を厚めの板状に固めて、板膠と比較したことがありましたが・・・
参考:PVAを固めてみた。 http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=976 乾燥した後、非常に硬くなる膠に比べて、PVAは乾燥後もわりと軟らかく、手で曲げたりすることが可能だったけれども、冬になったらガチガチに硬くなってピクリとも動かなくなった。 部屋を暖めると、徐々に軟らかくなって、再び手で曲げることができるようになる。 ちなみに、曲げたまま冷気にさらすとそのまま固まるが、しばらく部屋に置いているとまた平らに戻った。 アクリル樹脂が、冬季に硬くなるので、輸送時に注意ということが、Justpaintに書かれていたけれども、PVAはどうなんでしょうね。描画層みたいに厚くぬらないから関係ないか。 外部リンク:アクリル絵画の安全な取り扱いと輸送 http://www.turner.co.jp/art/golden/technicaldata/justpaint/jp11/jp11article1.html |
2012,02,14, Tuesday
今年の冬の寒さはなかなか厳しく、室内のオリーブオイルが白濁し、固まっている。
しかし、他の食用油はとくにそんな気配はない。画材のオイルも大丈夫である。 ググって調べてみたところ、オリーブオイル白濁の原因は、オレイン酸の含有量が多い為と説明されていた。 そこで、ハイオレインのベニバナ油及びヒマワリ油を屋外に出して、寒い夜の中放置してみた。 右に見えるオリーブオイルは白く固まっているが、ベニバナ油(ハイオレイン)は全く問題ないようである。 ハイオレインのヒマワリ油、昭和産業のオレインリッチも特に白濁、固化のような現象はみられない。 オレイン酸含有率80%と表示されているので、オレイン酸の含有率的にはオリーブオイルに引けをとるものではない。むしろ、オリーブオイルよりも高オレイン酸であることを昭和産業のホームページに紹介されていた。エキストラバージンのオリーブオイルがピュアオイルより早く白濁しやすいように、オイル白濁の理由のすべてがオレイン酸に起因するというわけでもなくて、他にも様々な要素があるのだろう。 ちなみに、ハイリノールのヒマワリ油も同じ環境に置いたが、心なしか濁っているように見えなくもないけど、目立った変化はなかった。 外に放置するとか、回りくどいことをやっているような気がしたので、手っ取り早く冷凍庫に入れて確認してみることにした。 以下は半日冷凍庫に入れて取りだしたところである。 おおぉ!ハイオレインのヒマワリ油は白濁し固まっているではありませんか。 ハイリノールのヒマワリ油は透明な液状のままである。 というわけで、ハイオレインかハイリノールかわからないヒマワリ油やベニバナ油があるとき、冷凍庫に入れて白くなったものは、ハイオレインの可能性が高いということが言えるかもしれない。逆に透明だったからと言って、画材に用いれるほどリノール酸含有量が高いという判断をできるわけではないが。。。まぁ、試塗するのが一番いいとは思うが、いや、どっちにしろ画材店で売っている油を使うのが一番だが。でも、ちょっと気になるので、次は食用サフラワー(高オレイン)と画材用サフラワー(高リノール)で比較してみたいと思う。 |
2012,02,08, Wednesday
冬になると室内でもオリーブオイルが固まっていることがあるんですが、試しにいろんなオイルを一晩外に置いてみました。
撮影時の温度計の表示は2~3℃ぐらいでしたが、直前の数時間は余裕で氷点下だったと思います。 エキストラヴァージン・オリーブオイル すっかり固まって不透明色になっております。 ピュア・オリーブオイル エキストラヴァージンが茶色いけど、ピュアオイルは白く固まってますね。 味の素の亜麻仁油 瓶の外側はびっしり氷がついているが中の油は特に変化無し。 紅花食品の圧搾未精製亜麻仁油 特に変った様子なし。 スタンドオイル 普段から粘度が高いけど、どうもさらに高粘度になっていような気がする。気のせいかも。 いずれにしても、それほど大きな変化ではない。 ウォルナットオイル ちょっと白濁しておりますが液状です。 で、まとめですが、理屈としてはオレイン酸主体の油が寒さで固まるという話なので、画材用のオイルはリノール酸またはリノレン酸主体であるから、オリーブオイルみたいには固まらないということです。 ふと、思ったのですが、これを利用してハイリノールとハイオレインの油を判別することができないだろうか、ちょっと試してみたいと思います。 |
2011,12,31, Saturday
前回、胡桃を潰したものを布で包んで素手で搾ったら、思いの外、簡単に油を絞ることができたので、同じ方法で亜麻種子やポピー種子を搾油できないかどうか試してみることにした。いずれも種子の外見的な印象からは、素手で搾るのは難しいと思えるが、やってみないことにはすっきりしないものがある。
まずはネットで亜麻の実を購入。 値段がちょっと高いような気がしていたけど、届いてみたらけっこうな量の亜麻の実だった。まぁ、搾油など試していたら、いつかは使い切れるとは思うが。ちなみに、カナダ産、加熱殺菌済み、製菓、製パン用との記載がある。生だったら、畑に撒けば芽が出てくるところですが、生の亜麻の実はシアン化合物を含むと言うことで、販売にはいろいろ規制がある模様。 できれば下記のものが欲しかったけど、残念ながらずっと品切れ表示である。 http://item.rakuten.co.jp/rawfood/raw_flaxseed/ これが亜麻の実である。 そのまま素手で搾れるようなものでもなさそうなので、ミルミキサーで粉砕する。 すごくいい香りが漂ってきた。パン生地に混ぜて焼くと美味しいかもしれない。 布にくるんで搾ってみたが、全くと言っていいほど油が出てくる気配はなかった。布が多少油っぽく湿ったような気がする程度。 次に、ポピーシードである。 これもミルミキサーで粉砕。 いい香りがする。食べてみたら、ピーナツバターそっくりの味であった。砂糖など全く加えてないのにすごく甘い。 触った感じではかなり脂っこい質感なので、胡桃同様、楽に搾油できそうな予感がした。 布が湿って油がしたたりそうになるも、胡桃ほどではなくて、器に垂らすまでにはいたらなかった。両手は油でべとべとになったが。。。 さらに圧力をかけてみたが、ピーナツクリームみたいな茶色いものが染み出してきたので、これは無理だということで、この件は終わりにした。 潰した実を布で搾って搾油するという方法が無難にできるのは胡桃ぐらいで、亜麻、ポピーは難しいようだ、というのが結論である。 |