2010,05,15, Saturday
シャルル・ブーロー(著)『構図法 名画に秘められた幾何学』の日本語版序文には「・・・ところが、わが国では、伝統的に、構図を数理的に考えることがほとんどなかった。すべては直感というか、勘の世界なのだ。どちらが優れているかの論はべつにして、ここに日本人の油絵の、構造的な弱さの一因があるのは、たしかだろう・・・」というくだりがあるが、全く同感である。しかしながら、構図法を数理的にキチンと考えるというような話をすると、直感派の人が現われてびっくりするほど怒りまくったりすることがあり、注意が必要である。逆に構図法の本を読んだが為に、絵画のほとんど全ての意味を構図に求めてしまうような場合もあって、それもどうかと思うわけである。構図法も直感も両方大切であって、どちらか一方に限ってしまうのが、そもそもバランス感覚を失調しているのではない。そのバランス配分は、各人が扱う題材や作風によっても異なるから、最終的には個人の判断となるのが筋であろう。
というわけで、構図を数理的に考えるという点はもっと美術教育に取り入れられていいかと思うのだけど、そうなると決まって登場するのが「黄金比」なんですな。エジプトのピラミッドや、アテネのパルテノン神殿、その他の様々な地域、時代の建築物やら、名画の数々に見出すことができるということになっている。それどころか、巻き貝とか、人体の比率など、森羅万象なんでもかんでもという感じで、いろいろ尾ひれがついて回るのだが、本当なんだろうか? と思わず疑ってしまいそうになるのだけれど、でも、ネット上のコメントなどを読むと、スゲー!って感じで、みんなそのまま受け入れてしまっているようである。解説書によっては、神秘の数字とか、古代から使われてきた絶対の美の基準であるとか、そのような文句が散りばめられているが、事の真偽はともかく、そのような話を聞いた際に少しも疑わないとしたら、ちょっと警戒心が無さ過ぎて危機管理上よろしくないと思わないでもない。正直のところ、黄金比を語れるほどの知識はないのだけど、いろいろもやもやした気持ちがあったので、手元にあった黄金比関連の本を軽く読み返した他、新たに注文したり、図書館から借りるなどして、読み漁っていたりしたのである。今は目の前にどっさりと黄金比の本が積まれており、はたから見たらどんだけ黄金比が好きなんだよと思われそうである。 実は黄金比はちょっとしたピンチかもしれない。もちろん、数学上の黄金比に格別の価値があることには変わりはないだろうが、美の基準みたいな、いろいろくっついていた付加価値みたいなものが再考されつつあるような気配がしないでもない。マリオ・リヴィオ(著)『黄金比はすべてを美しくするか?』は原題がThe Golden Ratio: The Story of Phi, the World's Most Astonishing Numberというらしいので、邦題はちょっと煽り気味な感じがするけれでも、数学としての黄金比の歴史を分かりやすく真面目に解説していて、その上で建築や美術で使われたとされている事例について検証しており、ピラミッドやパルテノン神殿に関しても黄金比を利用して築かれたという点が否定的に捉えられている。 自然や人工物に限らず、黄金比と言われているものは、実測してみると、黄金比というには誤差がありすぎる、あるいはそもそも黄金比と全く関係ない数値だったりすることが少なくない。wikipediaの「黄金比」の項は(他言語の同項目と比べて大した記事ではないのだけれど)、オウムガイが黄金比なのかどうかということで、ちょっとした編集合戦があったことが伺える。オウムガイの殻の構造は黄金比の例として頻繁に言及される。しかし、実際のオウムガイの測定値は「対数螺旋ではあるが、黄金螺旋ではない」というような記載が英語版Wikipediaになされ、それをもとにかどうか、日本語版に加筆されてネット上で広まり、各所でちょっとした衝撃を与えたようである。現在は、はっきりと否定した文献がないということで「・・・植物の葉の並び方や巻き貝の中にも見つけることができるといった主張がある」という感じに落ち着いている。 実は日本語版も出ているアルプレヒト・ボイテルスパッヒャー,ベルンハルト・ペトリ(著)『黄金分割 自然と数理と芸術と』に「・・・しかし、このようなみごとな性質は、対数螺旋ならどれにでも見られることを述べておかなければならない。黄金螺旋や妙法螺旋だけが、このような際立った役割を果たすわけではない。たとえば、オウム貝の螺旋は、黄金螺旋でも妙法螺旋でもないのである。黄金分割との関係は、本章で記述した初等幾何学的構造にとどまる・・・」と述べられいる。しかも同章は「…本章で述べる螺旋は、黄金分割とかかわりをもってはいるが、そのかかわり方は、著者等の考えではそれほど深いものではない。それでも、螺旋は、黄金分割との関連で言及されることが多いので、省いてしまうわけにはいかない・・・」という嫌そうな感じで螺旋の章を始めている。自分にとっても巻き貝はどうでもいい。 次に人体に黄金比見付かる、あるいは人体は黄金比で構成されているという話であるが、例えばヘソの位置が黄金比とされているが、スコット・オルセン『黄金比』では、長年の測定によると、「とくに多かったのは5/3(=1.67)だが、なかには8/5(=1.60)>もあった」とされており、しかし、それで充分黄金比の近似値と結論されている。まぁ、5/3もフィボナッチ数列であるから、黄金比に含めてもいいのかもしれないけれども、1.67は微妙なラインのような。。。ちなみに、平均的日本人が自分を計測すると、もっとすごいことになってて衝撃を受けるであろう。これは、美的に理想的な人体の比率が黄金比であって、べつに人体に黄金比が内包されているという意味ではないのかもしれない。いずれにしても、へその位置がそんなに重要だろうかと思わないでもないのだが。。。 やはり最大の関心事は、美術関連で古くからある作品に関して、制作者が黄金比を知っていて利用したのか、それとも美的に安定した形にしたら偶然に黄金比に近い値になったのか、あるいはそもそも黄金比の近似値は多少複雑な形を持ったものなら探せばいろいろ見付かるというだけで、取り立てて大げさに美の基準とまでいうほどのものではないのか、等々のような点である。で、手元に集めた各書の主張をいろいろ読んでみたのだが、気が向いたら感想など書いてみようかなと。 |
2010,03,15, Monday
ガラスとはいったい何であるか、改めて聞かれると、なんなのかよくわからないものであるが、根源的なことについては下記の書籍の冒頭が簡潔にまとまっている。
『トコトンやさしいガラスの本』日刊工業新聞社 (2004/07) Amazonで最初の数ページを閲覧できるのだけれど、初期のガラスの製法についてわかりやすく書き出されており、とりあえずはそこの部分だけ押さえて話を進めたい。 実のところ自分もまだまだよくわからない。無理を承知で説明すると、物質というのは固体になると分子が規則的に並ぶ結晶構造になるもので、例えば水は氷になると規則的な結晶になる。氷も立派な鉱物であり、たまたま融点が0℃ということで、ちょっと他と違った物質に感じるけど、鉄や石などと違いはない。ガラス状物質というのは、それらと違って液体のような並びの不規則な状態のまま固体になっている状態で、天然には黒曜石がそのような状態である。酸化ケイ素(シリカとか石英とか)がそのような状態を作りやすいようで、これは砂とかに大量に含まれている。しかし、シリカを溶かすには1600℃以上の温度が必要で、古代にはこのような高熱を作りだすことができない。ところが、アルカリを加えると融点が下がって、800℃ぐらいでも溶かせるようになる。地中海ではソーダ(水酸化ナトリウム)が豊富に得られたようで、砂とソーダを熱して、初期のガラスが作られたというのは、先で紹介した本にも書かれている。中世ヨーロッパではイスラム勢力の進出で地中海のソーダが手に入りにくくなり、木灰が使用される。説明が不備があるかもしれないけど、歴史的なことについては黒川高明(著)『ガラスの技術史』が読みやすい。 これらに関してよく理解するには、実際に砂やソーダ等のローマテリアルから、自分でガラスを作ってみるのが一番ではなかろうか、ということで、自分でガラスを作ってみることにした。事前によく調べれば作り方の情報はいくらでも集められそうではあるが、失敗もまた貴重な経験ということで、そこそこの知識でスタートすることにする。これは陶工パリシーの探求方法と言えよう。陶芸の釉薬とガラスは共通部分が多いので、全く見当違いということもない。結果的としては、パリシーのような悲惨な話になったが、パリシーも最終的には素晴らしい作例を残しているし、いつかはうまくいくこともあるんじゃないでしょうか。なお、絵画材料と関係ないと思われるかもしれないが、人工顔料とガラスの発色、あるいは釉薬の発色は意外に関係性が深いと思うのである。ガラスを砕いた顔料というのは昔からあるし、古代においては人工顔料の発生にガラス制作が大いに係わっていたのではないかと考えている。 まずは原料としてNatural Pigmentsよりシリカを購入。 これに灰を加えるのである。 灰は、染色用に買った藍熊染料の木灰(樫)がある。 中世ヨーロッパのガラス製法では石灰も主要な原料だったというような話を読んだことがある。 石灰と言っても、石灰岩なのか生石灰なのか消石灰なのかわからなかったが、妥当なところで消石灰を使う。 この壺は百円均一で買った磁器であるが、絵付け用絵具で、原料名を書いておく(他の筆記具では消えてしまうと思うので)。 シリカのみ、シリカ+木灰、シリカ+木灰+石灰 この三種類を入れた壺を陶芸用の石油釜にて、800℃で焼成。 翌日、冷めてから取り出してみた。 残念ながら、なんの変化もなし。ガラス化失敗である。 ふと思ったのだが、釉薬みたいに水で溶かしてみた方がいいのでは? ということで、今度はシリカと木灰を水で混ぜてみた。 今度は1200℃で焼成。 結果であるが、なんとも中途半端である。 軽く固まってる感じではあるが、ガラスとは言えない。 そもそも、水で溶いた結果なのか、温度を1200℃に上げたからなのか、要因がわからないが、これは自分の失敗である。 次に、陶芸粘土の如く、酸化鉄が存在した方がいいのかと思って、酸化鉄顔料(バーントシェンナ)を混ぜ、しかも、炭で焼成することにした。 壺に入れて、炭の中に。 翌日取り出してみたんだが、なんの力も加えてないのに見事に壺が割れてしまった。 寝る前に火の始末として水をかけたせいであろう。急に冷やしたために割れたと思われる。水かける前に取り出しておくべきだった。 しかし、どのみちフイゴで吹き続けるなどの行為なしでは、必要な温度に達しないだろうから、あまり意味がなかったといえる。 気を取り直してもうちょっだけ実験を続ける。 木灰ではなく、ソーダでやってみようかと。中世ヨーロッパでも、ソーダが手に入らなくなったから、木灰に移行したのだろうし、ソーダがあるなら、ソーダの方がいい。 で、シリカとソーダを入れた壺を800℃で焼成。 おや? ちょっと溶けてて、ガラスっぽくなってきたような。 しかし、表面をなんか触ると微妙に濡れてるような。ちょっと怪しいが徐々に結果が出てきているのか? そして、いろいろ考えてみたが、どうもシリカと木灰とかソーダとか、素材が純粋過ぎるのかも。 古代人が行なったような砂にソーダを混ぜて熱するといったようなケースでは、石英以外にも多くの物質が含まれており、それらがそれなりに役割を果たしていたのではないか。 というわけで、硅砂を購入。水槽用に売っていたものである。 浜辺の砂とか自分で取ってきて使うと、原初により近い形になって面白いのだが、今回その余裕はなかった。 硅砂とソーダを混ぜて焼成してみた。 キラキラして綺麗である。少しガラスに近づいた感じがしないでもない。 写真ではわらりずらいけど、横にしてる状態なんだが、溶け合わさっていて落ちてこない。 拡大図。 期待できそうである。 |
2010,03,12, Friday
ずいぶん前に、シルバーホワイトに各種乾性油等の媒材を混ぜて塗布し、どれくらい黄変するか見てみようという記事を投稿したのだけど・・・
■油彩用メディウム黄変試験 http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=437 あれから2年弱が経過したので、現状を観察しつつ、若干のコメントを残しておこうかと。 試験方法としては、けっこういい加減に混ぜたり塗布したりしているので、正確性に欠いていますが、まぁ、それも含めて、実際の使用に近いのではないか、とか言い訳しつつ。 写真は、実物の色とは多少違うとは思いますが、だいたいこんな感じです。 リンシードオイルはしっかり黄変してますなぁ。それに比べるとポピー、サフラワー、サンフラワー、ウォルナット(以降これら4つまとめてポピー系と表記)は共に黄変はずっと少ない。ただし、少ないだけであって、若干は黄変している。ポピー等は黄変しないと思っている人がけっこう居ますが、リンシードよりずっと少ないにしろ、ある程度は黄変する(これは俵屋工房でも言ってました)。気になるのはポピー系は触ると柔らかいんですよね。乾性油を多目に混ぜているという点と、塗布後すぐに額装したということで、乾燥の条件が悪いのは確かなのだけれど、リンシードのサンプルがしっかり固まっているのに大して、ポピー系は触るとあきらかに柔らかい。今まで同じ条件で塗布して触り比べるということがなかったので気付かなかったが、こうして比べるとけっこう差がある。ポピーで描いた上に、リンシードで重ね描きするのは、柔らかい層に固い層が載るわけで、あまり好ましくないかも。 リンシードオイルは様々な種類を試し、それぞれ若干の黄変度違いがみられるけど、試験方法が適当なのでだいたい誤差範囲でみんな似たように黄変していると言っていい。ビンに入っているときの見た目の色とはほとんど関係ないような気が。。。どのみち黄変するから無理にブリーチせずに黄色いオイルで描いた方がいい、とデルナーも言っていたそうですが。ただし、誤差というのを差し引いた上でも多少の傾向を読み取ると、スタンドオイルはやはり黄変が少なく、ボイルドオイルは黄変が多いような気がする。これも技法書通りの結果である。市販のサンシックンドオイルもそんなに黄変しなかった。市販の生リンシードオイルより黄変していない気がする。自製サンシックンドは生リンシードと同じくらいに黄変していたが、しかし使用したのがまだ自製に手慣れていなかった頃のサンプルなので、暇があったらリベンジしたいところである。ないけど。 ダンマルワニス、マスチックワニスを混ぜて塗布したものは、ポピー系よりさらに黄変していない。それに実に素早くカラリと乾燥した。ただし、まだ2年というスパンなので、年数が経つと黄色くなる可能性がありそうだと予想中。また、乾性油と比べたら、溶剤に溶けやすく、経年で脆くなるということなので、ダンマルワニスだけで描くというわけにはいかない。コーパルワニスは黄変してるけど、予想したほどでもない。ヴェネツィアテレピンが意外と黄変している。リクィン(アルキド樹脂)は全サンプル中、最も黄変が少ない。というかアクリルジェッソの地塗りとほとんど変わらん。 リンシード、ダンマル、テレピン等を適度に混ぜた、いわゆるペインティングオイル的メディウムを混ぜて塗布したものは、黄変も少なく、乾燥性も良くて、なかなかよろしい。まぁ、テレピンが適度に入ったために、乾性油の量がそれほどでもないというだけの話かもしれないけど、そういうのもひっくるめて、描画用メディウムとしてバランスがいいと言えるのでしょう。リンシード、ウォルナット、ブラックオイルなどのパターンで試しているが、確かにウォルナット使用のものはリンシード使用のものより黄変が少ないけれども、それほど顕著な差があるわけではない。 以上、サンプルを見ながら思いついたことを適当に書きなぐったので、不備あろうかという思われますが、そもそもまだ途中経過の段階で、これは何の結論でもなく、メモ程度だと思ってください。あと、サンプルは、真っ白い地塗りの上に塗られてあるから黄変が目立っているが、キャンバス上の色というのは、周りの色との相対的な関係で印象が変わるので、さまざまの色の中にあれば、黄変は目立たなくなる。特にバロック風の絵の中にあっては、一番黄変しているサンプルでも、きっとまぶしい真っ白に見えることでしょうから、画像を見て不用意に黄変を嫌わないように願います。 |
2010,02,20, Saturday
最近、染色、ガラス制作、釉薬などいろいろ試しているうちに、灰というものにいたく感心するようになった。木材その他をしっかりと燃やすと、最後に灰が残るから、これは常日的に頻繁に目にしているものであるが、この灰というのはなかなか有用な物質で、昔はこれを広い用途に活用していたそうである。灰は、水に入れて灰汁を作ることができるが、これはなかなか強いアルカリ性の液体となって、いろんな用途に使える。灰には多くの金属物質が残っていて、釉薬として使用すると様々の色になったりする。古代世界のガラス製造は砂にソーダを混ぜることで燃焼温度を下げていたが、地中海世界がイスラム圏になってからのヨーロッパでは、ソーダが入手できなくなった為に、代わりに灰を用いるようになった等々、挙げるとキリがない。
参考:灰 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%81%B0 釉薬においては、そもそも原始的なものでは、窯の中で燃やした薪の灰をかぶって、自然と釉薬になったりしたという話があるほど重要である。 しかし、現在使用中の窯は灯油式なので、薪の灰はかぶらない。 そこで、釉薬をかけるように、灰をたっぷりかけて焼いてみることにする。 べつに珍しいものではなく、灰釉と言って、普通に陶芸品店で売っているが。 ちなみに、この前やってみた灰釉は、袋に「陶磁器用灰釉」と書かれていたが、今回使用するものは「水簸天然木灰」とある。何が違うか調べたかったが、メーカー名で検索しても、公式サイトみたいなものは見つからなかった。 まずは、灰を水で溶く。 そこに、素焼きの陶器を浸す。 薄すぎであろうかと思うが、ちょっと灰が被ったくらいな感じにならないものかと、試行錯誤中な為である。 ↓焼きがあり。 素焼きをそのまま本焼きしたものと色が全く変わらない。よく見ると、ところどころ深緑のガラス状物質が見えるが、むしろ何かの汚れかと思われそうである。 まぁ、釉薬としては、灰は粘土と混ぜて使うのが筋であろうということで、長石を混ぜてみることに。 というわけで、こんな感じでかけてみた。 焼き上がりは↓このような感じである。 なかなか悪くないかも。 ひっくり返したところ。 |
2010,01,20, Wednesday
■前回■アラビアゴムで木工してみる。
http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=702 前回、アラビアゴムを接着剤にしつつ、軽く木工などを試みたが、今回はその上にアラビアゴムを媒材とした塗料を塗ってみることに。アラビアゴムは水彩絵具の媒材であるからして、実質的には水彩絵具(あるいはガッシュ)を塗るのと同じであろうけれども、油絵野郎なので水彩絵具はほとんど手元に無く、しかし顔料はいっぱいあるので、これとアラビアゴム水溶液を混ぜて塗るわけである。 まず、アラビアゴム水溶液とアンバー顔料を混ぜ合わせる。 刷毛で塗料を置き、ウエスで擦り込むように塗布。 いまいち塗料の伸びが良くないが、擦り擦りしているうちに、なんとかそれなりになってきた。 乾燥後、改めて眺めて見るものの、あまり綺麗ではないような。。。 塗りむらが酷く、磨く前の焼き板のような感じである。まぁ、慣れてないってのもあるが。。白い地塗の上ならば水彩絵具のように映えるのかもしれないが、板に直接塗布すると、今ひとつ引き立たないような感じがしないでもない。以前、度々試みたミルクペイントの方が塗りやすかったし、木材が映えるような。 話が逸れるが、先日、Understanding Wood Finishing: How to Select and Apply the Right Finishなる本を買ったばかりというのに、さらにTraditional Finishing Techniques (New Best of Fine Woodworking)という本も買ってしまったんだけど、それをパラパラめくっていたら、ミルクペイントが載っていた。 さすがに牛乳と顔料を混ぜるようなものではなくて、ちゃんとした既製品を使用しているが。 話は戻って、シェラックニスを塗る。 何層も塗っていたらテカリがひどくなったので、サンドペーパーで擦る。 壁に取り付けて完成。 机の上の小物を置く為の棚が欲しかったという、ただそれだけの話でした。 |
2010,01,01, Friday
気が付いたら新しい年になっており、いつもはブログにその年に観たDVDとか書籍の話とか年末にまとめて総括などしていたが、こうも1年が過ぎるのが早いといちいちそんなことしてられないような気がして、今後は反省会もビエンナーレ形式でいこうかと思ったが、1年は短いが2年だとけっこう長いので、悩ましいところである。
とりあえず、絵画材料的にいろいろ疑問が尽きない点が無数に残されているので、新年が来ようが来まいが淡々とやっていくだけだったりする。 さて、PVA糊製品の注意書きに「凍結注意」というのを見かけることがあるのだが、実際に凍結するとどうなるのかやってみようかと。。 なお、これまではPVAとして「せんたく糊カネヨノール」ばかり使ってきたが、一製品に固定するのは実験上よろしくないので、同じくせんたく糊の「ゴーセノール」という製品を買ってみた。 これも160円くらいである。 カネヨノールは液性が中性~弱酸性となっていたが、ゴーセノールは弱酸性とだけ表示されとりますね。実際にどう違うかは計測してないのでわかりませんが。 で、空きペットボトルにせんたく糊を入れて、冷凍庫に一昼夜・・・。 見事に凍ってますな。 しかも、なんか白くなってるし。 PVAは水溶性で、成分中の水分量はかなり多いから、凍るのはまぁ当然と言えば当然か。 もちろん、凍っている間は使用不可能である。 融けたら、またもとの色に戻った。 粘度とかも、元の状態に戻ったようである。 膠の水溶液は凍結させると接着力が落ちるそうなので、PVAにもそんな性質があるかもしれぬと思ったのだが、ちょっと凍結したくらいでは、たいして変質しないだろうから、3回ほど冷凍・解凍を繰り返した。 その後、手元にあった適当な紙(年末調整の封筒とレシートなのだが)を貼り付けてみた。 しっかり乾くのを待った後、手で剥がそうとしたら、紙が破れるぐらいには接着されている模様であり、接着力的には実用上問題なさそうである。というか、これくらいで駄目だったら寒冷地の在庫管理大変か。 凍結・解凍をもっと繰り返してると違うかもしれない。違わないかもしれない。 しかし、この辺でなんかどうでもよくなってきたので終了。 |
2009,12,20, Sunday
蜜蝋というと、個人的には油絵具の展色材やら加筆用メディウム等にかなりの頻度で使用しているのだけれども、そう言えば、それ以外の用途にはあまり使ったことがなかった。一応それなりに知っているように感じている事柄でも、普段やってることと少しでも外れると、まるで手も足も出ない未知の世界ですわなぁとか思いつつ、蜜蝋をちょっと弄ってみようかと思い立つ。
で、ここになんとなく投げやりな感じで作られた素木の棚がある。 自分が作った棚じゃないんだけど、これを使っていろいろいニスやらワックスやら試してみよう。 第一段階はミルクペイントで色付け。 顔料はキプロス島ローアンバーと同バーントアンバー。それと牛乳。 なお、牛乳はなんとなく電子レンジで3分熱したんだが、何の意味があるかはわからない。前もこうやって一応成功しているので。 牛乳に顔料を入れて混ぜたところ。 刷毛でドバッと塗ったが、サンディングとか木の表明調整を全くやっていなかったので、塗料のノリが悪い。しかも色が濃過ぎ。 布で擦りつけて塗ることにした。 塗装後。 割といい雰囲気である。牛乳で一応顔料がくっついているというのは何度見ても感心する。 塗装が乾いたところで、第二段階としてシェラックニスを。 カイガラムシ分泌物を、アルコールで溶いたものである(前日仕込んでおいた)。 ちなみに、100均の刷毛を使用。近所の100均の刷毛は私が買い占めてしまった。昔は毛が抜けたりして品質が悪かったが、最近は普通に使えるものが多い。 計二回塗ったが、なんかギラギラつやつやである。 いよいよ第三段階にて蜜蝋登場。 一応、こんな感じで手元に3種類の蜜蝋がある。左は、先日、キガタドットコムさんで購入したもので、最も色が濃い。蜂蜜っぽいような感じの香りがムワっとしてくる。芯でも挿したらそのままロウソクになりそうな。。とか言いつつ、今回は真ん中の蜜蝋(クレマー?)を使用。 蜜蝋を溶かす方法はいろいろありそうだが、というか、実際いろいろ試したんだが、それを書いてると長くなるので今は端折らせてもらうと、結局、電気保温プレートが最も手軽な気がした。 蜜蝋とテレピンを入れた器を保温プレート上に置いて、数分眺めていただけだが、わりと易々と溶解してくれた。この手の製品は保温という目的以上の温度は出ないので、わりと安全だと思うのだが保証はできないので、自己責任でどうぞ。 冷えると、以下な感じに。 冷えても固まるということはなくて、柔らかい練り物みたいなようなものになった。これを毛の落ちない布などで、表面に擦りつけるなどするといいらしい。 といいつつ、私は思わず、温度の高いうちに刷毛で塗ってみた。 これは濃度とかいろいろ考えないと、ちょっとあまりにも塗りすぎになってしまうなと感じで、すぐに布での塗布に切り替えた。 塗りすぎると、本当にいろいろ困るので、ご注意を。 うまくいったのかどうかわからないけれど、とりあえず終了。 参考: http://kigata.com/beeswax.htm |
2009,07,05, Sunday
前回までの荒筋。
チーズの接着剤について(1) http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=566 チーズのみで板を接着する。 http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=573 石灰とチーズの接着剤 http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=575 牛乳と顔料で板にペイントする http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=587 チーズに関しては、自分でもいい加減、飽きてきたような気がしないでもないけど、実験した写真が残っているので、めぼしい物をささっとエントリー。 ■プロセスチーズを使ってみる。 以前紹介した例では、主にうらごししたカッテージチーズを使っていたけど、スーパー等で一番普通に見かけるプロセスチーズは使えないだろうかということで、以下のように試してみた。 プロセスチーズです。 フレッシュチーズの類と違って、いきなり石灰水でプロセスチーズを綺麗に溶解させるのは難しいので、予め一晩水に浸して柔らかくしてみる。 ↓ 一晩水に浸すと、ふやけて柔らかくなり、ちょっと混ぜるだけで、こんな風に簡単に練りもの状に。 少量の水を加えれば、うらごしカッテージチーズと変わらん雰囲気に。 以降は、石灰水を入れて、よくかき混ぜてから、板を貼り合わせてるといういつものとおり。結果としては、素手で剥がすことができないくらいに接着されたので、まぁ、うまく言ったというところか。しかし、コンクリートに強打してみたら剥がれてしまったので、カッテージチーズ使用時より劣っているかもしれない。が、消石灰じゃなくて、生石灰を使っていれば、強力に着いたかもしれないとか、心残りも少々なきにしもあらずだが、この件はもういいや。 ■チーズで封をしている例を発見。 缶詰誕生200周年-200年前のびん詰を復刻- 包装容器及び容器詰め食品のプロを育てる - 東洋食品工業短期大学 http://www.toshoku.ac.jp/tech/108.html なるほど、こんな方法があったとは。というか、こんな発想があったとは。 これを再現するわけではないけど、盛り上げみたいな感じにチーズを塗ってみようかと試す。 カッテージチーズに生石灰を投入。 ベニヤ板に盛って、ついでなので、適当なものを貼り付けてみた。 |
2009,06,19, Friday
本日は午後から某B氏と共にホルベイン工業(株)さんへご訪問の約束をしておりまして、午前中の空いた時間に古市古墳群を訪ねてみることに。関西滞在中、いろいろ予定はあるけど、その合間に古代遺跡、特に古墳群を見てまわろうと企んでおり、歴史群像シリーズ『図説 日本の古墳・古代遺跡』学習研究社及び『図解古代史 - 旧石器時代~律令国家成立まで写真と地図で解説』成美堂出版などを読みながら予習してたりして。
関西の古墳を訪ねるのは初めてなので、普通ならまず仁徳陵に行くところだが、そっちは日曜を丸々利用するつもりだったので、先に古市方面を。古市古墳群は近鉄南大阪線に沿って散在するので、奈良方向に向かいつつ、古墳群を順番に訪れようかと、まずは一番手前の河内大塚山古墳を見るために恵我之荘駅で下車。 大塚山古墳は古市古墳群に分類されることが多いけれども、位置的には大きく外れていて、だいたい百舌鳥古墳群と古市古墳群の中間ぐらい。そのためか、古市古墳群のガイド的地図には載ってないことが多い。大きさ的には全国で5位だという。これってすごいことだと思うが、廻りの古墳がメジャー過ぎて埋没しちゃってますなぁ。 で、駅から西に向かって歩くこと数分、看板を発見。 デカイなぁ。これまで見た古墳で一番大きいのが、埼玉県の二子山古墳(全国97位)だったので、全くレベルが違う感じだ。やはり本場は違う。カメラに全く収まらん。 堀の途切れている方に行ってみたが、拝所のようなものもなく、ただの柵があるのみ。復元工事とかされるより、鬱蒼とした森林になってる方が時の流れを感じさせるので、こんな感じの方が好きだけど。 西側から撮影。 あまりにも暑いので、日傘を差すことに。日傘っていくら探しても女物しかなくて、少々恥ずかしいのだが、この古墳の周りはほとんど人気がないので、問題なし。 予想外の大きさのため、一周しているうちに時間がなくなってしまい、古市古墳群歴訪計画は初っ端の大塚山古墳のみで終了。 午後は、念願だったホルベイン工業(株)技術部さんのところへ訪問し、工場の絵具製造工程などを見学させてもらいました。その他、たくさん勉強になるお話を伺う。すっかり長居してしまい、ご迷惑でなかったか心配です。 日も暮れ始め、同行していただいたB氏も関東方面へ帰り、その他特に約束もなかったので、前日、暑さで行き損ねた四天王寺に行ってみる。寺の拝観って、だいたい3時過ぎると入れなかったりとか多くて、あまり期待はしてなかったけど、実際に行ってみたら、境内には入れて、さらに五重塔がライトアップされててすごい綺麗なんですな。有料の見学場所は全部閉まってたけど。 |
2009,04,18, Saturday
チーズの接着剤について(1)
http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=566 チーズのみで板を接着する。 http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=573 前回、カッテージチーズ(うらごし)を水に混ぜたもので板を接着してみたが、今回は消石灰、あるいは生石灰を加えたもので、同じことを行なってみる。 カッテージチーズ(うらごし)は少量の水に溶くと見た目も臭いもヨーグルトみたいな感じになる。この時点でしっかり混ぜておいた方が後の作業が楽になる。 そこに、消石灰を少々投入する。 しばらく攪拌していると、微妙に透明度が増してくる。ちょうとカゼインをアンモニアで水溶化したときとそっくりで、独特の硫黄っぽい臭いまで同じだったりする。ただし石灰はそれなりに白いから、後に紹介する石灰水を使った場合に比べるとずっと白く見える。 板に塗布して、貼り合わせてみる。 1~2日放置すると、素手では無理なぐらいに接着されている。水とチーズだけのときはコンクリート壁に繰り返し叩き付けているうちに剥がれてしまったが、今回はそれくらいのことではビクともしない。 接合面したところはこんな感じ。溢れた糊が黄色っぽい透明になっている。 次に、生石灰を使用してみる。現代人向けの処方ではアンモニアか消石灰を採用していることが多く、生石灰と消石灰の違いで何か差が出るだろうかと気になってしまわないでもない。『絵画材料事典』のカゼインの項には「・・・ほとんど全種のアルカリのいずれかと混合すると接着剤となる。アルカリが石灰の場合はこの接着剤は強耐水性となる。今日では消石灰(水酸化カルシウム)の方が生石灰より使いやすくなっている・・・」とあり、当時との状況の変化により消石灰の方が身近なものになっているから、というふうにも想像できる。また、カゼイン接着剤は元々耐水性とされるが、石灰を使用するとより強い耐水性が得られると読み取れる(A.P.ローリーはアンモニアの替わりに石灰を使ってもなんら利点はなかったと書いている)。単に強いアルカリが必要なら、現代なら薬局でアンモニア水を買うのが楽であり、同じくらい消石灰も身近に存在するが、生石灰は確かにそうでない気がする。 先ほどと同じようにカッテージチーズ(うらごし)を水で溶いてよく攪拌する。肝心の石灰であるが、実は生石灰を塊のまま投入しても効率よく反応してくれず、むしろ粉末の消石灰の方がうまくいったくらいだったので、直接投入は止め、ひとまず生石灰を利用して石灰水を作り、それを入れてみることに(生石灰は食品乾燥剤のものも、薬局のものも大きめな粒のものしかなかった)。正確には生石灰に水を入れて軽く混ぜただけの状態なんだけど。ちなみに、生石灰は水と反応して熱を発するのでくれぐれもご注意ください。 反応がとても早く、すぐさま半透明状になった。 同じことを消石灰を溶かした水でもやってみたが、生石灰の方が遥かに強力と思われた(pHとか計ったわけではないけど)。間違って飲んじゃったりしたら胃が溶けるかもしれないので、くれぐれもご注意を。 板に塗って、貼り合わせてみる。 さっきより、透明度高いっすね。アルカリとして強いという点と、白い粉があまり入ってないからかと。 これもまた強力に接合された。 接着面が黄色くなっている。 |