2008,10,05, Sunday
ウルトラマリンは大気による灰色化や、シルバーホワイトとの混色による変色などを本などでよく目にするけれど、実際にはっきりと目で確認する機会はあまりないと思うので、ちょっと強引な環境を作って、それらの現象を発生させてみよう、という実験です。
まずは、小さく切った合板にアクリルジェッソを厚めに数層塗布。そこに油絵具のウルトラマリンを塗る。 写真のように、ウルトラマリン単色と、シルバーホワイトとの混色の2種類を塗布。 塗布の際、自製サンシックンドオイルとテレピンで若干希釈してある。 ガラス容器に酢(ワインビネガー)を注ぐ。 ワインビネガーに直接サンプルが触れないように、陶器の器を置いて、その上にサンプルの板を置き、フタをする。酢酸とか使う方が実験らしいかもしれないけれど、より身近な素材を使った方が、より現実味が増すような気がするので。 これで酸性の空気に曝されるという感じになると思います。 すぐに反応が現われると思っていたのだけれど、何日経ってもほとんど変化無し。塗布するときに、しっかり油を加えて塗ったので、油による防護膜で出来ていたかもしれない。次回は、テレピンのみとか、水彩絵具などもサンプルに加えておこうかと思った。 3週間ほど経って、ようやくパッと見でもわかるような変化が現われたので取り出してみる。酸性の大気に触れさせるつもりだったけど、すっかり水滴が付いてたりする。 脱脂綿で水滴を拭き取り、撮影する。 左のシルバーホワイトと混色した方は、全体に黒い斑点が多数現われているのが見える(特に外周あたりに濃い黒が出てますね)。酸との作用で、ウルトラマリンから遊離した硫黄がシルバーホワイトの鉛と反応して黒くなったものと思われる(違ってたらご指摘を)。 右側のウルトラマリン単色の方は明らかに色が薄くなってなっている。 条件としてはかなり過酷な状況での変化だけれども、通常の環境でもい長い年月のうちにこのようなことが起こるかもしれない。といいつつ、予想したより反応に日数が必要だったのは、やはりリンシードオイルをしっかり追加したからか、と思ったりして。次は、ワニス引きした場合などの比較してみたいっす。 |
2008,09,03, Wednesday
最近、MAIMERIのウォルナットオイルが入手できるようになったので、これまでポピーオイルを使用していたような場面で、積極的にウォルナットオイルを使用しているのだけれど、これがまた非常に乾燥が遅いような気がして。。。少し多めに使うといつまで経っても皮膜が柔らかく、カラリと乾いてくれない。もしかしたらポピーオイルより遅いのではないか、などと思い始めたところで、実際どうなんだろうと思い、乾燥速度の試験をしてみることに。どうせなので、手元にある他のオイルもまとめて実施してみることに。
アクリルジェッソを塗った板の上に、少量の絵具に各オイルを混ぜて塗布する、という方法で行なう。使用した絵具はホルベインのブライトレッド(乾燥日数3日)。各オイルが混ざるといけないので、パレットに16のサンプルと同じ数、少量ずつ絵具を絞り出し、筆にオイルをつけ、絵具に混ぜて塗布。一度使用した筆は筆洗器で洗ったのち、ホワイトスピリットで二重に洗浄、キッチンタオルで溶剤をよく拭う。できるだけ公平になるように、最初のサンプルを塗る際も筆洗器とホワイトスピリットで洗う行為を行なっている。と言っても、ブログにエントリーするレベルの実験なので、あまり精度の高い試験ではありませんから、その点ご留意の上で読んでください。問題点としては、全て新品のメディウムを使用したわけではなく、一度フタを開けて時間が経っているものもあるので、その場合、若干酸化している可能性があるのと、溶剤を混ぜていないので、粘度の高いオイルはどうしても厚めの皮膜になりがちで、不利な条件となってしまう。なお、乾性油に関しては、いずれも揮発性溶剤を使用しないで絵具に混ぜているので、通常の描画時に使用する状況よりも乾燥日数が多くなっているかと思われるので、実際に描画に使用したときにこれくらい時間がかかるというわけではないので。 乾性油以外にも、調合したメディウムとか、ワニス、合成樹脂などもサンプルに加えている。 以下が、試験結果を表にしたものであるが、指触乾燥のみの表示とした。指触乾燥とは指で触っても塗料が付かないという乾燥ぐあいで、内部はまだ柔らかったりする。その後の乾燥状況も表示したかったが、それぞれ実に微妙な進行具合だったし、厳密な塗料用語を使用せよとか言われると非常に困るので、表の上では省くことに。 まず、ワニスから。 ワニス系は揮発性の溶剤を多く含むので、乾性油だけのサンプルより遙かに速く乾燥するの当然と言えば当然。そもそも、塗布する際にどうしても薄目の膜になってしまうので有利。全サンプル中、最初に乾燥したのは、マスチックワニスであり、ダンマルワニスはけっこう遅かった。 ヴェネツィアテレピンは、テレピン精油等では薄めなかったので、他のワニスとは条件が異なる。しかし意外にもマスチックワニスと同程度のスピードで指触乾燥に到達。MAIMERIのヴェネツィアテレピンは他社製品よりも粘度が低く、テレピン精油を含む割合が多いのかもしれない。とはいえ、指触乾燥と言っても皮膜は非常に柔らかく、べたついた感じがいつまで経ってもなくならない(揮発性溶剤を加えれば別だと思うが)。 溶剤の多量に含まれたワニスを除外すると、最も速く乾燥したのが、コーパル・ペインティング・メディウム(クサカベ)とリクインファインディテール(W&N)。ブラックオイルも速かった。次は、サンシックンドオイルだが、特に自製のサンシックンドオイル(未ボイル)は、市販のサンシックンドオイルより速く乾燥した。と言っても、市販のサンシックンドオイルもかなり速いことに変わりはないが。 リンシードオイル、コールドプレスド・リンシードオイルはけっこう遅かった。スタンドオイルは普段からかなり遅いと思っていたが、今回の試験では、普通のリンシードオイルより若干速かった。不思議なのは、リンシードオイルが指触乾燥に至るまでの時間で、なんとポピーと同じくらいかかってしまった。コールドプレスドリンシードオイルは、全サンプル中でも最も遅かった。ただし、リンシードオイル全般は、たとえ初期の指触乾燥が遅かったとしても、その後の皮膜の固まり方などでは、ポピーなどリノール酸主体の油より、ずっとさっぱりとした乾燥具合になる。 リノール酸主体の油群(ポピーオイルなど、一般に黄変が少なく、乾燥が遅いと言われる乾性油)では、ヒマワリ油が最速、ついでウォルナット、3番目にポピー(と言ってもウォルナットオイルとの差は僅かでほとんど同時)となり、それらに比較するとサフラワーがやたら遅かった。ヒマワリ油は、指触乾燥までには、生のリンシードより速かった。 ■反省点 荏の油を加えるのを忘れていた。 なお、先に書いたとおり、厳密に条件を揃えられなかったので、参考程度にということで。 |
2008,08,23, Saturday
ウルトラマリンは酸性の大気に触れることにより退色してしまう。
逆に希塩酸など酸性の液体で退色した場合は、ウルトラマリンであるとわかる。 ということで、ちょっと実験をしてみる。 ※有毒なガスが発生するので、絶対に真似しないでください※ 希塩酸を使うのが普通かと思うが、できるだけ身近な材料で行なった方がいいかと思い、酸性液としてレモン汁を使用してみる。 ウルトラマリン顔料とレモン汁を用意。 というわけで、磁器皿上に、ウルトラマリンを少量。そこに、レモン汁を投入。 軽くかき混ぜる。 すぐに反応が始まり、硫黄臭がしてくる。数分後には色がなくなる。 硫黄が分離しているということは、ここに鉛白加えたらどうなるのか。というわけで、少量の鉛白を投入。 真っ黒に。 ウルトラマリンだけ実験しては、他の青との比較がないので、コバルトブルー顔料でも同様の実験を試みる。 いくら待っても変化なし。 いろいろなウルトラマリンを比較テストしてみる。 左上から、天然ウルトラマリン(クレマー)、クサカベのウルトラマリン、同ウルトラマリンライト、クレマーの人工ウルトラマリン、インターナショナルクラインブルー、コバルトブルー。 レモン汁投入直後。 数分後。 本当は耐酸性処理の比較などができればと思ったのだけど、レモン汁多かったのか誤差程度の時間差でコバルトブルーを除く全サンプルの色が無くなるという結果に。天然ウルトラマリンも実験に加えた為、さすがにもったいなくて少量ずつのサンプルになってしまったのが原因。写真ではK社の顔料が先に色がなくなっているように見えるが、これはレモン汁を投入した順番のわずかな時間差によるもので、写真を撮るタイミングがミスるなぁ。ただし、天然ウルトラマリンだけはいちはやく色が消失したように見えた(もともとの色が合成品に比べて晴れやかな青なので、そのせいもあるかもしれないけど)。天然ウルトラマリンはちょっと黒っぽくなってるのは不純物でもあるのか。なお、現代の合成ウルトラマリンは、耐酸性処理されているそうで、しかし低級品はされていないとか。 ※有毒なガスが発生するので、絶対に真似しないでください※ |
2008,08,10, Sunday
今回は丁子(チョウジ)、染料と言うより香料みたいなもので、ますます絵画材料と離れているような気が。
使用したのは藍熊染料(株)の丁子 英語でクローブって言って、食材(香辛料)として西洋でも昔から使われていたそうですな。私は料理とかよくわからないので、さっぱり知らなかったけど。 染料としての使用法を調べようと思ったのだけども、書籍、ネットともにあまり情報量は多くない。木村光雄(著)『自然の色と染め』によると「アルミ媒染で茶色に染めますが、鉄媒染による黒染めに使用されています」P.50とあるので、適当に2種類の媒染方法を試してみようかと。 と、その前に、布に対して灰汁で先媒をやっておく。 染浴に浸けた布を、灰汁の媒染剤に浸けると(後媒っすね)、じわっと色が抜けて媒染液に出てしまうことが多くて、もしかしたら濃度が濃すぎるのかもしれないけど、とにかく布から色がどんどん抜けてしまう。染まるという現象は、色素が染浴から布の繊維へと移動することだとすれば、逆に先に灰汁で先媒しておけば、染浴から色が布へ普段よりどっと移動しないだろうか、などと考えたわけだが。まぁ、まだ灰汁というものの性質がよくわかってないですな、自分。 染めるのは綿100%のTシャツ。 煮出し。1時間弱ぐらい。香料だけあって、けっこう香る。 一応、濾しておく。 こんな感じの染浴に。 綿のTシャツを2枚ほど投入。こんな感じで、薄い茶色ぐらいの色。丁子染めの衣類なんか見るとこの程度の色調なので、これで特に問題はないのだろうけど。 片方はそのままみょうばんで媒染してみる。特に色味的に変化なし。 残りの染液に錆び釘と酢で作った鉄媒染液を入れてみる。タンニンを含むので鉄媒染で黒に。つってもそんなに濃くはないが。 水洗いして干す。黒っぽいのが鉄媒染、黄色いのがみょうばん媒染。 乾かした状態。左がみょうばん媒染、右が鉄媒染。ちょっと写真では薄く見えるが、だいたいこんな感じの控えめな色調。 ※テキトウにやったものであり、本エントリーの手順が正しいかどうかは保証致しかねます。 |
2008,07,12, Saturday
灰汁というのは、植物の灰を水に混ぜたときの上澄み液で、灰中の水溶性成分が溶けた水溶液。主成分は炭酸カリウム。アルカリ性で、染色用途ではアルカリ媒染剤となる。染料系の色材をいろいろ試してみている今日この頃なんだけど、まだ灰汁での媒染というものをやってみたことがないので、今回はそれを試してみることに。
昔の人は薪やら炭やらを日常の燃料としていたので、木灰、および灰汁は豊富にあり且つ非常に多用途な材料として使われていたようだが、現代ではあんまり身近ではないっすね。家にも火鉢のようなものがあるので、灰がないわけではないけれど、あまりたくさんはないので、藍熊染料(株)の木灰(樫)を使用。500gを630円で買ってくるのはどうなんだろうと疑問に思いつつも、だからと言って大量にまとめ買いしても使い道ないし、まぁ、しょうがないということで。 この記事では、木村光雄(著)『自然の色と染め』P.68の手順に従って行なうことに。具体的には「・・・灰の10倍の量の水(たとえば、灰1㍑なら水10㍑を加えて、時々かき混ぜながら1週間ほど置き、上澄みを取る方法で・・・」という、たったそれだけの一文であるが。しかし、その他にも灰汁の性質についていろいろ書かれてあるので参照されたし。 では、さっそくバケツに木灰を入れ、容積比にて10倍の水を注ぐ(本の処方が重量でなく体積比だっただめ、計り損ねて結局てきとうな感じで水を入れてしまったが)。 で、よくかき混ぜる。 フタをする。 1週間ほど、時々かき混ぜながら観察。一部の灰が水の表面に浮かんで、綺麗に上澄みが取れるか心配だったが、何度もかき混ぜる行為を繰り返しているうちに、全部下に降りていき、一週間後には実に綺麗な上澄みが取れそうな様子に。 というわけで、できあがった上澄みをすくい上げる。 さっそく実験ということで、スオウ(蘇芳)で染めたシルク(未媒染)を、灰汁に付けてみると、オレンジ色が鮮やかな赤へと変化。 シルクのスオウ染め、左が未媒染、右が灰汁媒染(乾燥したら紫色に)。 |
2008,07,04, Friday
布というのは織る際に縦糸に糊付けするらしいが、生地店で布を購入してきた際、その布に糊がついているか、あるいはすでに糊抜きされているのか確かめる手段としてヨウ素液で試験する方法があります(理科の実験などでやるヨウ素液とデンプンの反応を利用したもの)。
本実験では、ヨウ素液として、薬店で簡単に手に入る希ヨードチンキ(ヨウ素を含む)を使用。ただし、そのままでは反応が強すぎてかえって判定が困難になるため、水で約30倍に薄める。 購入した布の一部を切り取って、ガラス棒(のようなもの)でヨードチンキ液を1~2滴ほど垂らす(布の端に垂らしてもいいけど、作業中にヨードチンキが飛び散ったりすると、せっかく購入した布のあちこちに黒い斑点を作ってしまいかねないので、やはり切り取ったサンプルがよろしい)。 今回は生地屋から購入したシーチング、生地屋から購入した生成の麻布、画材用の麻布(膠引き済み)、薬店のガーゼでテストしてみた。画材用の麻布は生キャンを使用したかったのだが、手元にあったのが膠引き済みのものだけだったので、その裏側を使用することに(割と高級な部類のキャンバスである)。ガーゼは薬局で購入したもので、精錬・漂白されている布の典例として実験に加えてみた。 写真は左からシーチング、麻布、画材用の膠引き麻布、ガーゼ。ヨードチンキにより青紫色に着色された場合はデンプン糊がついている可能性あり。黄色いままの場合は、デンプン糊はないであろうということで。見たところ、シーチングは糊がある模様(まぁ、実際は布に触っただけで分かるのだが)、生地店の麻布もデンプンの反応が出てるっぽい、画材用の膠引きキャンバス(の裏側)はほぼ無色、ガーゼもほぼ無色。 なお、染色の場合は、糊が残っていると染料をよく吸ってくれないため、糊抜きは重要な行程だが、絵画の支持体として使用する場合どうなのかはよく知らない。デンプン糊は用紙のにじみ止めとしても普通に使われていたり、ときには絵画用地塗りの媒材とされる記述をみることもあるので、べつになんか悪いというわけではないと思うが。 というわけで、染料関連の本で布の精錬、漂白の部分を読んでいて、糊が付いているかどうかの判別方法を知り、思わずやってみたくなったので、そのレポート也。素人実験なので、そのつもりで読んでください。 |
2008,05,26, Monday
自然染色なるものをやったことがなかったので、今回はそれを試してみる。
前からやってみたいとは思ってたのだけれど、正しいやり方などを調べるために書籍など借りてきたりしていたが、いまいちわかりやすい手引き書がなく、というかこんなふうに調べているといつまで経っても先に進まないので、適当にやってみることに。手元に数年前に入手してそのままになっているコチニールカイガラ虫があるので、それを。コチニールっていうと、ヨーロッパ的には、大航海時代に南米から入ってきて、それまでのケルメス染料を駆逐したというやつですね。 まずはカイガラ虫。ずいぶん昔に俵屋工房より購入したのだが、絵画材料としてどう活用すればよいか用途が見いだせずに放置していたもの。 染める対象たる布。コチニールの場合、動物性の繊維の方が染まりやすいというので、ウールとシルクを(ヤフオクで)入手。 カイガラ虫を擦りつぶした状態。 ガーゼにくるんでお湯に入れるとさっそく色が出てくる。 十分色が出てきたところで布を投入して煮る。非常に濃く染まっているのがウール、薄いピンク色なのがシルク。さっぱり染まってないのが、私が目を離したすきに親が勝手に入れたなんだかわからない布。ずいぶん違うけど、布の種類によって適温があるらしいので、その辺の違いなのかも。 つぎに色を定着させるために媒染するわけなのだが、今回はみょうばんを利用。コチニールの場合、先にみょうばんで媒染してから染めた方がいいとネットに書いてあったのだが、ちゃんと定着するんだろうかという思いがあって、後にしてしまった。とりあえず、少量のみょうばんを入れたお湯をタライに用意して、染液の鍋から取り出した布を入れてみる。 うーん、でも、コチニールの液のなかにみょうばんをぶっこんでしまった方が早いんじゃないか、などと考えて鍋にいきなり入れてみたところ、茄子漬け色になってビックリく。キタネェー色だな。 しばらくみょうばん液につけたあとに干す。これはシルク。なかなか上品な色じゃないですか。 こちらはウール、すごい濃いなぁ。少々斑があるが、これは染液に入れるときにまんべんなく水で濡らされていないとこうなるらしい。 完成の図。 さて、こうなると、体質顔料に染めてレーキ色が作れないだろうかという話になりそうだけれど、たとえ出来たとしてもブリードが心配で使えないので却下と予め宣言。 |
2008,05,07, Wednesday
「鉛白作りも」というコメントがあったことだし、鉛と酢で鉛白を作る方法を試みてみることに。
要は、鉛板を酢の蒸気にさらすことによって腐食させて白い顔料を得るわけで、蒸気にさすために古今様々な工夫がされてきたわけですが、今回は最も単純な方法、壺の中に酢を入れ、丈夫に鉛板を置くというのでいってみようかと。なお、予め断っておくと、単に興味本位の実験としてやるだけで、効率よくとか品質等は特に考慮してませんので。 鉛の板はどこで買えばいいのかわからなかったので、生け花道具の鉛製花留を購入。他にはトレーニング用の手首や足首に着ける重り、釣り具の重りにも鉛板が入っているので、その辺のお店で入手できると思われ(鉛板はとても柔らかく、厚いものでも曲げたり切ったりということが簡単)。酢に関しては、普通の食酢でもいけるかと思うが、それよりも濃度の高い局方の酢酸あたりが良いだろうと薬局へゆく。ところが酢酸は置いておらず、替わりに氷酢酸を手渡される(氷酢酸は純酢酸と呼ばれる純度の高いもので、引火性及び腐食性なので取扱いにはくれぐれも注意)。というわけで、今回は氷酢酸を水で薄めて使うことに。 ガラス容器に酢酸を入れ、その上に鉛板を置いて蒸気に晒すのだが、鉛板が直接酢酸液に触れないように適当な磁器の器を置いて台にし、そこに安定して乗るような形に鉛板を曲げておいてみる。ちなみにガラス容器も磁器も100均で購入。なお、ガラス容器で行なうのは、中の様子の変化を随時確認するため。それにしても、もともと酢の臭いが苦手なのだが、酢酸もキツイ。 しっかりとフタをして10日ほど放置し、出てきた白顔料をかき取って、また戻して10日後にまたかき取るということを鉛板がなくなるまで続ける予定だが、たぶん途中で飽きてしまうだろうな。数日かけてゆっくり変化があらわれるのかと思いきや、数時間後には鉛板の表面が白くなり、翌日には写真(下)のように鉛板の表面にびっしりと白いものが。これが鉛白であろうか。 ついでに、スーパーで買ったワインビネガー(酸度7.0%)でも試してみる(写真下)。これでも数時間で表面に白いものが出る。 |
2008,04,28, Monday
■毒物注意■
鉛白を熱して、マシコットあるいはリサージと呼ばれるものにしてみる実験。 マシコットはかつて西洋絵画で使用されたすず鉛黄色(lead tin yellow)の名称とされることもあるようですが、今回は鉛白を加熱して作る一酸化鉛(PbO)。マシコットとリサージは顔料屋では同じものとして販売していることも多く、正直のところ両者の厳密な違いが自分には未だによくわからないのだけれども、例えば『絵画材料事典』の記述からすれば、マシコットは鉛白をゆっくりとローストした溶融していない一酸化鉛であり、一方リサージは溶けた金属鉛を直接酸化させてつくる溶融した酸化物、というのが書籍やネット上によく書かれている。けれども本によって説明が随分異なるのが悩みの種である。いずれにしても今回行なうのは鉛白を熱して黄色またはやや赤味のある顔料を作るという実験である。 まずは100均のフライパンに顔料を載せる。鉛白は毒性もあるのでアルミホイルに包んで加熱するという方法もあるが、今回は空気に触れていなければならないのではないか?と思ったのでフライパンを使用。 どの書物でもひかえめにゆっくりローストするよう書かれているので、弱火で加熱。と言っても直火なのでけっこうな温度だと思うが、間もなく黄色みを帯びてくる。マシコットあるいはリサージの説明では、色は明るい黄色~やや赤っぽい黄色、オレンジぐらいの範囲とあるが、顔料屋で販売されているマシコットのサンプル画像などを見ると、白っぽい黄色、あるいはクリーム色と呼ばれるようなものが多く、この写真の時点で終わりでもいいかもしれないが、まあ、ものは試しなのでそのまま加熱を続ける。 だんだん赤味を帯びてくる。事前にネット顔料屋のサンプル画像をいくつか見てまわったのだが、リサージの名で売られているものと同じような色合いっぽい。マシコットというと黄色、リサージは赤(オレンジ)という説明が多い。顔料サンプル画像もそうである場合が多いが、しかし逆の説明がされている本もあったり。 ところで、焼いているうちに顔料が妙に飛散しやすくなっているような気がした。毒物であるからして気を付けなければ。 完成(?)した顔料。ちなみに、マシコットもリサージも購入したことはないので、これでいいのか悪いのか不明。気が付いたことがあれば、コメント欄にてご指摘を。 |