ヘマタイトを砕いて顔料(ベンガラ)にしてみる その1
酸化鉄の赤、日本ではベンガラと呼ばれるところの顔料を作ってみたいと思います。

なお、テキストしては以下の論文を参考にしました。
児玉大成「亀ヶ岡文化を中心としたベンガラ生産の復元」日本考古学12巻(2005)20号
https://doi.org/10.11215/nihonkokogaku1994.12.20_25

できれば赤鉄鉱くらいは自分で見つけてきたいところですが、鉱物採集の知識がまだ足りず、今回はネットで買った腎臓状ヘマタイト原石を使うことにします。


楕円的な丸みの形状を腎臓状と言うらしいです。ヘマタイトはさまざまの形状や色の鉱物があって、たぶん、ツルッとした感じのものが固いのだと思いますが、固いものだと硬度5を超えてくると思われます。かつては鏡状のものや、つるっとしたものなど集めて、今も手元にあるのですが、全く赤くないのですが、でも条痕色は赤いので、砕けば赤、またはすくなくともパープルっぽい赤くらいの顔料にはなるかと思われます。

前傾の論文では赤鉄鉱の頁岩を採集し、頁岩は固いので、そこに付着しているコークス状の赤い部分を使って縄文人がベンガラを作ったという論になっております。コークス状の意味は最初ちょっとわからなかったのですが、石炭のコークスではなくて、多孔質という意味のようです。

実は今回の腎臓状ヘマタイトもひっくり返して裏を見ると、多孔質そうな赤い部分があるので、ここを中心に使えそうな気がします。

さて、これまではハンマーや乳棒で砕いておりましたが、今回の原石はちょっと堅そうに見えまして(実際はそうでもなかったのですが)、縄文人と同じように、石で砕いてみたいと思いました。

自宅の庭石の中で平らな感じのものを選び、タワシやらクレンザーやらで、せっせと洗いまして、表面の汚れと藻のような植物を落としました。


で、写真のような丸みのある堅くて重くて、ある程度の大きさの石で摺り潰します。


まずは石の重さを使って上から叩き潰す感じで、ズシズシと潰します。

ハンマーでやるとどうしても飛び散ってしまうのですが、叩き用の石がそこそこの大きさだと、破片がどっかに飛んでいくようなことが少なくて、とても良い感じです。

ある程度砕いたところで、赤い部分だけ集めました。


この部分や柔らかいので、乳鉢と乳棒であっという間に細かくできます。


それから、腎臓状の黒い部分。

これもまぁ、細かく砕けば赤色になるとは思いますが、こちらは別に粉末化してみます。赤いコークス状部分よりちょっと堅いような気がします。

しかし、叩くときに使った石を、今度は体重をかけてハンドル操作風に左右に円を描いて擦ってみたところ、実に簡単に細かくなってくれました。


こんな感じであります。

概ね赤褐色になりました。先に砕いた赤いコークス部分を砕いたものより若干彩度が落ちてはおりますが、乳鉢もさらに砕けば差は縮まるかもしれません。それにしても、大きな石で砕くとめちゃくちゃ楽ですね。乳棒よりずっといい。ポットミルよりも短時間で済みそうです。これでマラカイトも砕いてみたいところですが、台の方の庭石が少々柔らかいので、堅い庭石を探さねばなりません。

そして、この後水簸に進むわけですが、件の論文では、土器で煮沸していたようで、そうすると鮮やかなものになるように読めるのですが、加熱しない水簸と何が違うかは気になるところです。200℃くらいで加熱すれば、赤色度は上がるかと思うのですが、お湯で煮るということは最大でも100℃なのではないか、という感じもありますが、とりあえずは鍋で煮てみたいと思います。

| 絵画材料 | 09:50 PM | comments (0) | trackback (0) |
海緑石(グロコナイト)を砕いております。
海緑石(グロコナイト)をネットで購入しました。

テールベルトの素材となる鉱物であろうかと思います。

まずは、かち割ります。

今回は小さな標本を砕くだけなので、全工程を乳鉢乳棒でいこうと考え、乳棒でガシガシ叩いたのですが、硬度2とされるので、砕きやすいかと思ったのですが、最初にかち割るときはハンマーでやるべきでありました。モース硬度は、削れやすさみたいな指標であって、割りやすさとはまた違うということですね。でもまぁ、乳棒でもいけます。なかなか割れなかったのですが、写真を見てもわかる通り端っこからボロボロ崩れてくるので、モース硬度的にはやはりかなり柔らかいのでありましょう。ちなみに、ある程度砕いたところで、茶色い部分は取り除いておきました。

マラカイトを砕いてみるたいな見た目になってきました。

マラカイトより若干砕きやすいです。辰砂とマラカイトの中間くらいでしょうか。

というわけで、細かくするにしたがって徐々にテールベルト感のある見た目になってきました。


このあと水簸等の工程をやっていきます。なお、テールベルトの元になる鉱物には他にセラドナイトもあるそうですが、機会があれがそちらも砕いて比較したいところあります。おそらくは今回の海緑石よりは明るい色調になるかと思います。天然のテールベルト顔料でも、色が暗いものから明るいものまでありますので、原石の違いであろうかという確認をしてみたいところです。なお市販のチューブ絵具は、テールベルト以外の顔料が含まれているか、あるいはテールベルトが全く含まれてない場合もありますが、それはラベルの表示で確認できますが、ラベルの表示が天然緑土だけであったとしても、実は他の顔料が含まれているケースが多いのではないかと思います。まぁ、別に結果的に好みのものを使えばそれで問題はないのですが。

それにしても3月ももうすぐ終わりなのですな。私の春休みも残りが少なくなっております。まだまだやり残したことは多いのですが。しかし、赤鉄鉱を砕こうと思って標本を注文済みです。赤鉄鉱および褐鉄鉱からベンガラを作りたいかと。なお、含水酸化鉄の方はなんとか近所の山から取ってこれないものかと思います。宮城県は辰砂も赤鉄鉱もテールベルトもいいものは見つけられそうにないのですが、せめて含水酸化鉄くらいはなんとかなろうかと。隣の岩手県では琥珀が採れるし、山形では辰砂とれそうなところもあるし、しかし宮城は何が採れるのであろうか。

| 絵画材料 | 11:02 PM | comments (0) | trackback (0) |
緑青を発生させております。
以前ヴェルデグリづくりをしたいということを書いていたわけですが、様々の方法で緑青を発生させております。

最も単純な方法であるワインビネガーを入れた容器に銅板を入れて酸性の蒸気に曝す的なもの。


酢酸またはその他の腐食液を入れた容器に、銅板を吊すパターン。


そして画家鳥越一穂氏より頂いた大きな銅板、これは普及品ビネガーにて。

鳥越さんは銅板を支持体に描いておられるので、使わない銅板がないか聞いてみたら、けっこう大きなものを置くって頂きました。

純銅タワシがよいという情報も頂きましたので、それも試しております。


さて、シンプルに緑青を集めて使うだけでしたら、これで顔料完成みたいなものでありますが、絵画材料事典はじめ、諸々の文献では、単に発生した緑青と、結晶化させた緑青で色が違うとか、特に油絵具としてときの彩度が異なるというような話が書いてあったような記憶があるので、結晶化させてそれと比較したいわけですが、さて、どうするのでしょうか。酢酸に溶かして緑色の濃い液体にした状態で熱して、あるいは熱した状態でさらに溶かすようにして飽和溶液に近づけてゆき、その後それをゆっくりと冷ましてゆくと結晶化してくれるのでしょうか。あるいは結晶化は水の方に変えてできるであろうか。この辺はよくわからんですな。試しながらやってみますかな。中世の書物だと熱い尿をかけたりしてるので、そういう意味もあったのだろうか。いずれにしても私は何もわからん。テオフィルスが何を言ってるかもほとんどわからぬのです。

| 絵画材料 | 10:49 PM | comments (0) | trackback (0) |
クロウメモドキ(ラムナス)の苗を購入。
気がつけばもう春っぽくなってきておりますので、植物を買う時期になっております。毎年、いろいろ考えつつ、主に色材となっているような植物を中心に、美術史に関連するものなども買っていたりするのですが、日本の東北で育ちそうなものはたいてい植えた気はしているつもりになったりしますが、よくよく勉強を続ければ、まだまだ手の掛かってないものは多いのです。終わりはないと考えてよろしいところでしょう。

というわけで、まず本シーズン一発目ですが、クロウメモドキ(ラムナス)の苗を買いました。

実から緑の染料が採れるようで、それが本来のサップグリーンですが、絵画材料事典によれば、潰して液にするぐらいで緑にはなるようで、ドロドロの状態で家畜の臓器の革袋に入れて売られている場合もあるし、ミョウバンに染着することもあるというふうに書いているけれども、それは昔の話でありましょう。現在市販のサップグリーンは合成有機染料であり、本物の方は耐光性も甚だしく悪いようなので、売られることもないあまりないでしょうし、使うのも推奨できないかと思われますが、それはともかく緑が採れるか試したいところです。植物は緑色をしていることが多々ありますが、実用的な緑の染料が採れることはあまりないので、気になるところです。なおこの果実は人体には有毒のようです。

それから植物ではありませんが、土性顔料について試してみたいことが多々あります。幸い、大きなポットミルと回転台を譲り受けることができましたので、こちらも活用できないかと考えております。

以前このブログにも書いた小さなポットミルと回転台ですが、試行錯誤した末に顔料作りに役立つという程のものではなかったという感じであります。やはりある程度の大きさは要るかと思います。このポットミルは中のセラミックボールもずっしりと重く、大概のものを細かく粉砕しそうな予感がします。もっとも、まだ使ってみたことはないのですが。
ちなみに、回転台の方は、ロクロ回転機でありまして、その上に棒があって、ポットミルを回転させられうようになっている模様です。

ですから、本来は釉薬を作るといいますか、釉薬を砕くのが目的なのかと思われます。

| 絵画材料 | 10:08 PM | comments (0) | trackback (0) |
ヴェルデグリを作ろうかと考えております。
我がラクティスですが、ディーラーにて6ヶ月点検を済ませました。昨年からの大雪の影響か下回りがけっこう錆びておりまして、マフラー近辺など部品を交換しなければならないかもしれない的な心配もあったのですが、今はまだよろしかろうということで、通常の点検だけで終わりました。降雪地は融雪剤によって車が錆びやすいわけですが、おそらくは冬はあまり錆びないのであろうと思います。気温が低いので腐食の進行は遅くなるかと。夏に塩カルを綺麗に落として、特に化学反応の進行しやすいときにまめにシャーシをチェックするべきでありますな。金属を腐食させて顔料を作り始めてから、そんなことを思うようになりました。無事、9月の車検が通ったならば、きっとその後2年は乗れるのでありましょう。そこが潮時かなという予感もありますので、今度タイヤ買うときは安いのにしておいて、それからエンジン周りの寿命を延ばす添加剤的なものも入れなくてよいかな、という気がします。そもそも半年毎にオイル交換してるのだからそれで充分でありましょう。それよりも毎年の錆止めコートを欠かさずやってもらうのが車の寿命延長には良さそうな気がします。気に入ってる車なので長持ちして欲しいところです。

さて、3月はあまり仕事の予定が入っていないので、というか、ほぼ入ってないので、この期間を使って未だに試して居なかった顔料の製法を試みてゆきたいと考えております。まず標的となるのは銅系の人工顔料です。代表的なものはヴェルデグリでありますが、ヴェルデグリというと人工の緑青による緑色の顔料を表すのであろうかとというのが私のぼんやりした認識ですが、文献状での知識しかありませんので、ここは実践的な面を試して知識を補強したいところであります。ヴェルデグリは広義では緑青全般について、あるいは緑青的な青い緑色を差す色名となっているようでもあり、ちょっと定義を狭めると意図してかあるいは意図せずとも銅が腐食してできた緑青を差すであろうかと思われます。銅にできる緑青は塩基性炭酸銅、酢酸銅、その他いろいろあり、この場合は化学式的に限定するのはできません。意味的に限定的にすれば、最終的に狭義ではヴェルデグリは酢酸その他の銅を腐食させるガスに銅をさらして作った緑青となるかと思われます。古代では既にプリニウスが製法を書いていますが、酢を入れた容器の中に銅を吊してフタをするみたいな感じだったと思います。これはやってみたんですが、もっと反応して欲しいと思った印象が残っています。腐食して緑青ができるとそれが膜になって中の腐食は進まないという理由もありますが、酢酸以外のガスも供給するべきではなかったかという疑問もあります。何しろ鉛白の作り方も酢の容器に鉛を晒してフタをするというものでありましたから。炭酸ガスを供給したら炭酸銅的になるのでしょうか? それはともかく、ヴェルデグリの作り方としては、他にも酢酸液の中で銅を溶かして結晶化させるという方法もあるようで、酢酸ガスにさらしてできた緑青をさらに溶かして結晶化させるということもあるようです。ダイレクトに銅から溶かして実践している例もネット上にはありました。なお、私も実はやってみようとしたことがあるのですが、ジャムの空き瓶に入れて溶かしていたら、フタが腐食して崩壊するという事故で中断しておりました。当時はネット上の情報が少なかったこともありますが、簡単に諦めてしまいましたが、今回はちょっと粘り強く試してみたいと思います。それからヴェルディターとかバイスなどと呼ばれる銅系の顔料(青~緑色)もありますが、これは人工の塩基性炭酸銅系かと思われまして、製法は全く別となりますが、これも合わせて試してみたいところです。以上、試すべきことは多々ありますが、しかし何はともあれ、銅を酢酸ガスで腐食させるという行為に勤しむのが第一歩であろうと思います。この季節は気温が低くて化学反応も鈍いという、季節的に向いてないということもありますが、夏にやると酢酸に虫が大量に寄ってくるという困った問題がありますので、特に今回は密閉状態ではない状況で酢酸上記に晒したいという考えもありまして、今の時期に試みるのもまた悪くはないという考えがあります。なお、いっそのこと緑系をいろいろ試してみたく思っておりまして、ヴァーディター、サップグリーン等についてやってみるというか、少なくとも素材の入手ぐらいは進めておきたいようにも思います。クリソコラも砕いて、テルベルトにも詳しくなって、緑系に隙の無い知識を得たいと考えておるわけであります。

| その他 | 10:29 PM | comments (0) | trackback (0) |
自製鉛白を乳鉢で摺りつつ水で洗う方法
昨夏にせっせと鉛板から発生させた自製鉛白、まだまだありますので、これを油絵具にしてゆかねばなりません。

鉛白を発生させるよりもこちらの方が実は大変だと思います。今回は、鉛白を水で洗う方法を変えてみます。海外サイトで書かれていた方法です。

乳鉢に自製鉛白を入れまして、そこに水を注ぎます。

ちなみに乳鉢の大きさはφ15cmです。

そして、乳棒で摺ります。

塊になっている感じのところを潰してゆきつつ、水で洗うというふうに考えております。ダマになっているところが、手練りの際に時間のかかる原因になっておりますので、これで手練りも若干は短縮されるかもしれないという期待をしております。

1~2時間放置すると、鉛白は下に沈殿します。

白い顔料の場合は、ガラス製の透明な乳鉢の方が視認しやすいのかもしれません。白い磁器製乳鉢だと鉛白の色に近すぎて、少々わかりずらいところがあります。

沈殿したら上澄みの水だけを別容器に移します。

ゆっくりと水を流せば、綺麗に上澄みの水を取り除けます。

そしたら、また水を入れて同じ行為を繰り返します。今回は4回洗いました。回数の目安は今のところわかりません。
参考にした海外サイトの記述では、濾紙とキッチンペーパーで水気を取り除くのですが、私の場合は、平らなさらに注いで自然乾燥を待つことにしました。

埃の落ちてこない場所に置かねばなりません。ちょっと皿に顔料を入れすぎで乾燥が遅そうに見えるので、もう1つ皿を用意して分散し、厚さを小さくしたいところです。この乾燥方法だと、水干絵具みたいに固まって、やはり手練りに手間取ります。あとは、あまり水に浸けたままにするより、素早く水気を切ったいいような疑問がちょっとあるのです。いずれにしても、練ってみるまでわかりませんが。なお、現時点での反省点ですが、乳鉢に顔料と水をたっぷり入れた状態で摺っても、あまり顔料は細かくならないようで、少なめの水で充分摺ってから水を追加するとよいのではないという気がしました。けっきょく塊はけっこう残りましたので。

| 絵画材料 | 09:40 PM | comments (0) | trackback (0) |
The Technology of Red Lake Pigment Manufacture: Study of the Dyestuff Substrate
National Gallery Technical Bulletin Vol.26にThe Technology of Red Lake Pigment Manufacture: Study of the Dyestuff Substrateという、赤レーキ顔料に関する記事が載っているのですが、ようやく目を通しました。
※現在はPDF化されて無料でダウンロードできるようになっています。
https://www.nationalgallery.org.uk/research/research-resources/technical-bulletin/the-technology-of-red-lake-pigment-manufacture-study-of-the-dyestuff-substrate

個人的に気になった点でだけメモしておきたいと思います。まず、古い時代にはレーキを作る際の染料源として、植物や昆虫そのものではなく、染色済みの繊維を使用するのが通例だったようであり、確かに中世の技法に関する本を読むと、染めた布など使っていることがよく見られるので、そういうものなのでしょう。布に染めていたインクを溶かして文字を書くとか、なんか読んだこともありますが。手順的には、染色された繊維からアルカリで染料を抽出し、続いてミョウバンを添加して顔料を沈殿させるという、現在一般的なレーキ作りと逆のプロセスになります。18世紀に入っても文献のレシピはこのようであったとのこと。

そして染料源の繊維は羊毛や絹が使われていたようですが、アルカリで染料を取り出すと、動物性の繊維はいくらか侵されるので、特に羊毛の場合、強いアルカリで染液を取ると、古画のレーキから硫黄その他が分析結果に出てくる模様。絹の場合は染料が出やすいので検出されるほどにはならないようで。

それにしても、有機色材は様々なものが検出されるでしょうから、媒材の特定というだけでも、レーキ顔料の作り方まで含めて、多くの知識がないと間違った結論を引き出しかねないところもありますから、けっこうな知識と経験とそれらを整合する洞察力が要るであろうと思われるところで、なかなか高度な仕事であるなと思ったのですが、同時にやはり結論を安易に鵜呑みにしてもいけないだろうなという気もするところです。

しかし、ボロ布を使ったレシピもあったそうなので、昔の繊維の染色というのは色が後から取り出しやすかったのであろうか。今だったら、しっかり媒染剤を考えるなどして、色が出ていかないよう最善の工夫をするわけだけれども、昔は今みたいに頻繁に洗濯をしなかったか、あるいは繊維の種類によっては全く洗濯せずに使うパターンとかあって、ただ染液に浸けただけみたいなケースもあったのかもしれないと、これは私のただの感想ですが。

ところで、18世紀後半には虫や茜などの素材から染液を取りつつ、ミョウバン→アルカリ的な技法が使われてくるようになるみたいですが、間もなく合成の有機色材もどんどん出てくるであろう時期にもさしかかっていたわけですね。

| 絵画材料 | 11:01 PM | comments (0) | trackback (0) |
自製鉛白を油で練ってみました。
鉛白づくりですが、前回は出来た顔料を水で洗ったところでまで進みましたが、その後、さらにもう一回水で洗って、その後乾燥するのを待っておりました。そして↓のような感じなっております。

前にも書きましたが、この鉛白は微妙に赤みがかった色の顔料が生成されてくる鉛テープから作られた分であり、水で洗った時点で赤みの色は消えたものの、それは屈折率の都合でそう見えるだけで、乾燥したら元に戻るのではないかと心配していましたが、パッと見てちゃんと白いような気がします。いや、じっと眺めていると赤みがかっているような気がしてくるのですが、気のせいかもしれないし、そうでないかもしれないし。でも、当初ははっきりと色がわかったくらいなので、それよりはずっと改善しており、やはり水で洗うことで、変な色が消えたりするという海外サイトの情報は合っていたのであろうか。

まぁ、ともかくとして、油で練ってみたいと思います。今回は油の色が影響を与えないように、ポピーオイルを使用します。その他の助剤は一切入れずにポピーオイルオンリーで練ります。

とりあえず、このくらい練ってみましょう。水に浸けてから乾燥すると、こんなブロック形状になりますが、こういうのを細かくするのはいつも難儀な工程です。手練りなので、欲張ってたくさん練ろうとしてはいけません。

少し油で湿らせてから、練り棒で塊を砕いてゆきます。

乳鉢乳棒でやるのが筋かもしれませんが、なんか乳鉢洗うのも面倒なので、これでよろしいでしょう。この時点で既に油で湿らせておいたのは、鉛白が飛散したりしなくていいかなと考えまして。

いよいよ本格的に練りはじめたところですが、このような感じであります。


ごく少量をとりわけて、それを菊練りみたいに円を描くように広げてゆき薄い膜にするようにしてすり込んでダマを解消してゆきます。

やがて艶のあるペースト状になるので、それを脇に寄せて、さらに次の分を練るというのを繰り返します。

1時間かけてこのくらい練ることができました。

このあとさらに2時間近く、計3時間ほど練りましたが、途中に休憩を挟まないと身体を痛めると思います。スタック法鉛白を練るのはけっこう難儀するものでしたが、慣れてくればいずれ上手くなっていきそうな手応えもあります。実はまだ若干粒状のものが混ざっております。このままもう一巡練ればそれも解消されるとは思いますが、体力的に限界であったのでこのままチューブに詰めました。チューブに入れて2~3週間油と馴染ませたあとにもう1度練ると、むしろその方が完成度が高まるであろうかと思います。何かアドバイスがありましたらコメント欄にお願いします。

| 絵画材料 | 09:37 PM | comments (0) | trackback (0) |
ウェルド顔料を亜麻仁油で練る
昨年入手しました、ウェルド顔料(天然植物由来のレーキ顔料)、炭酸カルシウムをボディとしたものと、ミョウバンを使ったものと2種ありましたが、まずは、ウェルド(炭酸カルシウム)の方を亜麻仁油で練ってみました。

なんとなく、こちらの方が油絵具との相性は良さそうな気がします。炭酸カルシウムがボディなのでけっこうダマがあり、手練りでは少量でも30分はかかりそう。いろも自然な感じのイエローです。赤い絵具はいいものが多数あるので、赤い布ばかり描いておりましたが、これで黄色い布もいけるかもしれません。あとは耐光性がどうか観察したいところです。写本制作の場合はウェルド顔料+水性媒材で全く問題なさそうです。しかし油彩タブロー画ではどうでしょうか。

こちらは炭酸カルシウムではない方のウェルド顔料を亜麻仁油で練ったもの。

屈折率の都合でペーストは暗い色に見えますが、薄く塗布すれば自然な感じの黄色になります。試し塗りしたところでは、結果としては炭酸カルシウム版と差はない色になりました。練るのは炭酸カルシウム版よりだいぶ早く済みます。

試し塗りした結果ですが、数年前に頂いた顔料と比較すると格段に黄色みが増しております。

同じ染料でも製法の研究開発によってこれほど違ってくるわけですね。薬品の投入量とかペーパー等で違ってくるわけでしょうか。

最近私もレーキ顔料づくりに取り組んでいるのですが、どうしても参考にしたい点がありまして、顔料を水に入れ撹拌し、顔料が沈んだあとの上澄みに万能リトマス紙を付けてみましたが、極端なペーハーは示さず、しっかりと中性付近でありました。

それにしてもこの万能リトマス紙では中性付近が不鮮明なので、やはりデジタルペーハー計測器が欲しいところです。ちなみに、上澄みの水の色も透明です。写真ではちょっと濁ってますが、そのまま2時間くらい待つと綺麗な透明になります。やはりプロが作ったものは違います。というわけでいろいろ勉強になりました。私もレーキ顔料作りの経験を積みたいと思います。

| 絵画材料 | 09:33 PM | comments (0) | trackback (0) |
鉛白を水で洗う
夏から作っていた鉛白、だいぶ集まりましたが、ここから絵具にするまでが大変です。最終的にはリンシードオイルで練って、油絵具にするわけですが、そこまでのノウハウはまだあまり解決していないような気がします。

ある鉛テープから作り出した鉛白がピンクがっかっており、これは特定の鉛テープにしか発生したなかったので、原料の方に問題があるのだとは思いますが、こちらを使って、いろいろ試してみたいと思います。


まずは、水で洗浄してみます。水での洗浄というのは必要な工程であろうかと思います。まず、水に溶けるような不純物を取り除けます。変な色がついているときは、水洗いだけで消えることがあるようです。

というわけで、700mlほどの水に入れて撹拌し、顔料が沈むのを待ちました。

なんか、綺麗な純白色になっているように見えます。気のせいかもしれないし、屈折率の影響で見えなくなっただけかもれませんが。

それから強い酸性の蒸気の中で生成された鉛白ですから、酸性の傾向を示すのではないかという心配もあります。水を万能リトマス紙で確認しました。

中性に近いと思われます。実はこの万能リトマス紙、ph5~8あたりの色が似ていて、いまいち判定しずらいのですが、水道水に浸したときと同じ色をしているので、たぶん中性に近いか、あるいはわずかに酸性よりかもしれませんが、少なくとも水道水基準値内くらいではあろうと思われます。700mlの水で1回洗えばphの問題はクリアできるのではないかと考えています。鉛を洗うわけですから、廃液は少ない方がよろしいですし。

他には、塩基性炭酸鉛になりきれていない酢酸鉛も水に溶けやすいという情報もあるので、酢酸鉛除去にもなるのかもしれません。

さて、水を移してすくい上げた鉛白ですが、たいへん被覆力に富んだ立派な鉛白になったように思います。

白さ、明るさも立派なもので透明感みたいな感じはありません。かなり薄く塗布しても白さが強いので、むしろ体質顔料等で割りたいくらいに見えます。

しかし現時点でもなんとなくほんのりとビネガー臭がするのです。数種類の酢を取り扱いましたが、ふつうの市販の穀物酢に比べるとワインビネーが酢の臭いがけっこう強烈です。まぁ、古来染料でもなんでも臭い物ほど性能が良いものなのですが。もう一度水と取り替えて洗浄することにしました。鉛白は重い顔料ですから、すぐに水の底に沈みます。面倒くさがらずにときどき撹拌するのがよいと考えます。

さて、上記の鉛白の写真を見ると、若干粒状感的なものを感じるかと思います。ちょっと大きめの粒的なものがあって、以前他社製スタック方鉛白を練ったときは、なめらかな絵具にするまで少量でも数時間かかったということもありまして、この辺がどうなるか気になるのです。これに関しては手練りでいこうと思います。それでダメならポットミルで延々摺ってからというパターンと試そうと思います。鉛を含むので工程は手短な方が助かるのですが。※この記事を参考にする場合は、毒性があること及び環境への配慮を留意ください。

| 絵画材料 | 09:01 PM | comments (0) | trackback (0) |

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