マツ科の植物について整理してみたい。
急にマツ科の植物が気になって仕方がなくなって調べはじめているところです。急に気になり出すのも変ですが、マツ科の樹木から採れる絵画材料としては油彩画家なら誰でも使っているテレピンが採れるということで、極めて重要であるといえるでしょう。これまでは乾性油が採れる植物や樹脂が採れる植物にばかり注目してきましたが、ここでようやく精油の方へ気を配る余裕が出てきたと言いますか、むしろ今までうっかり忘れていたともいえますが。

とりあえずマツ科に属するものとしては・・・

カラマツ属(Larix):こちらは欧州唐松(Larix decidua)から採れるのがヴェネツィアテレピンだったかと思われる。針葉樹の中では珍しく落葉樹らしいので、見分けやすいかもしれない。山に登ったら木を付けて見ることにしたいところですが、可能であればタネか苗を入手したい。カラマツの苗はいつでも買えるけれども、西洋絵画材料的には欧州唐松がよろしいであろう。

モミ属(Abies):こちらは欧州モミ(Abies alba)から採れるのがストラスブルクテレピンだったかと思われる。モミの木はかっこいいスマートな逆三角形。先日も書きましたがタネを入手したので、現在は発芽に挑戦しているところです。

ヒマラヤスギ属のレバノンスギ(Cedrus libani)は、古代史によく登場するのでちょっと気になる。これを植えて育てるスペースはないけれども、盆栽的なサイズで観察してみたいようには思います。Amazonとか検索すると売ってますな。

マツ属(Pinus):アカマツ、クロマツを含み庭、公園等でも珍しくないと思うので、図鑑を片手に見てわまりたいところである。これは田舎町を歩けばとにかくいろんなマツが植えられているので、種類を覚える練習には困らないかと思います。そう考えると散歩も楽しくなりそうです。

中東から地中海の樹木は東北では育たないことも多いのですが、マツ科はむしろ東北の方が向いているので、できることが多くて楽しそうであります。そもそも今までは広葉樹が贔屓であって、針葉樹はあんまりという気持ちであったのだけれども、そういうのはあかんですな。いろいろ詳しく調べてみたいのだけれども、図書館も閉館中なので、手元にある資料を手がかりに身近なところから徐々にレベルアップしていく感じで勉強してゆこうかと思います。

| 家庭園芸 | 09:07 PM | comments (0) | trackback (0) |
イリアスをどの訳で読むか
ギリシア文明の文学や美術を軸とした古典主義は、1900年前後まではまさにヨーロッパの価値観そのものであり、同時にアカデミズムの特徴のひとつでもあって、それを克服するのが20世紀の美術だったようにも見える。しかしそれくらいの影響を与えるくらいだから、古典にはやはり圧倒的な魅力があったとも言えましょう。特にルネサンス期、バロック期など、古典への熱い情熱みたいなものに溢れており、それを抜きに技術だけ見ては一面的な物の見方となってしまうと思われるのですが。昨今の石膏デッサン論争の件もあることですし、ちょっと古典古代の魅力を再検討してみたいところです。さて、古典古代の魅力を共有するにはなんといってもイリアスを読む、に尽きるのではなかろうか。古代ギリシア人なら誰もが読み、生き方の規範としたという叙事詩であり、その後もギリシア神話系の文学では最も重要な作品であり続け、19世紀にも幾多の考古学者を駆り立てた物語である。中世からルネサンス当初にかけては、ラテン語の叙事詩であるアエネイスがやはり重要度が高かったのか、ダンテの神曲の案内役はヴェルギリウスであるけれども、それ以外はやはり一貫してイリアスが最重要であったろう。ホメロス作「イリアス」は、ミケーネ文明崩壊後のいわゆるギリシアの暗黒時代が空ける頃、紀元前8世紀に成立したとされる作品で、古代ギリシア文学の中でも最古期のものである。当時は吟遊詩人が活躍し、様々の叙事詩を謳って歩いていたと思われるが、一個の作品としてまとまって出現した世に残った最初の作品であるけれども、1万6千行に及ぶ長大な叙事詩で、古代ギリシアを通しても最大の文学作品である。ようやくポリスが出現し、総大理石のギリシア神殿もまだなく、幾何学紋様のギリシア陶器を作っていた時代、ホメロス自身が実在の人物なのかもわからないが、ちょっと特異な特徴があり、完成度もすこぶる高いことから、大枠は一人の詩人が作ったという説に賛成である。トロイア戦争を描いた作品だけれども、ちょっと変わった特徴がある。まず、トロイア戦争全体ではなくて、10年間の戦いの中の50日間だけを描いている。ふつうこれほど長大な作品ならトロイア戦争の発端となったパリスの審判から始まり、クライマックスはトロイの木馬によるトロイア陥落になりそうなところである、というのが現代からみたら一般的な感覚かと思う。別の詩人によりそれらの部分の叙事詩も作られているが、イリアスよりも成立は後で、作品の質も劣っていたとされ、現存していない。トロイア陥落語の物語オデュッセイアもイリアスに劣らず長大な叙事詩であり、こちらもホメロス作とされるが、年代はイリアスより半世紀後くらいになるということなので、同一人物によるのか微妙である。オデュッセイアの方は、起伏に富んだ冒険談であり、一つ目の巨人など神話的な怪物も登場するなど、我々が神話というものに抱くイメージに近い。現代人にとってはオデュッセイアの方が面白いと思う意見が多いであろう。それと比べると、イリアスの方はやはり特異な作品のような気がする。10年も続いた戦争の末期であり、終始殺伐とした雰囲気の戦闘シーンが続き、それも解剖学的な丁寧さで殺戮を描くのが特徴である。例えば、槍が延髄に刺さって舌を貫いて前歯に当たって止まった、等々の生々しい描写が続き、そしてその者の出身地、生い立ち、両親などが言及され、大切に育てられたが親孝行する前に死にました、などという文言で締められる。それらの名前や地名は実在のものだったかもしれないけれども、ほとんどは特定されていない。そのような描写が延々と続き、夜になれば、死者を火葬し、牛を解体して焼いて神々に捧げ、肉とワインを飲んで眠る。日々それを繰り返しているのだけれども、実際に物語を精査すると50日間で行なわれた戦闘の数はそれほど多くない。でもひたすら戦っているだけに感じられるのである。トロイ戦争は、ギリシア勢とトロイア勢の戦争であるが、オリュンポスの神々は(ゼウス主神の目を盗みながら)各々肩入れする陣営に味方する。基本的に姿は現さず他の人間の形になって介入する。不思議な怪獣なども過去の回想を除いて出てこない。トロイの木馬のような現実味のなさそうなエピソードもない。神々の物語でもあるのに、圧倒的な現実感がある。話の筋としては冒頭まず、ギリシア側の英雄アキレウスが総大将アガメムノンとの確執により戦線を離れ、以降、ギリシア側が劣勢に立たされるところからはじまる。血なまぐさい戦闘が延々続いたのち、親友パトロクロスの死をきっかけにアキレウスが戦線に復帰するが、同時にゼウス主神はオリュンポスの神々に対し、今後は自由に介入してよろしいと許可を与え、人間と神々が入り乱れての大戦闘が開始されるのがまさにクライマックスシーンであろう。アキレウスはトロイア側の英雄ヘクトルを倒すが、親友を失った悲しみは癒えず、戦車にヘクトルの遺体を括り付けて延々と引き釣り回して日々が過ぎる。ある夜、父親のトロイア王プリアモスが単身アキレウスの元にゆき、息子の遺体を返してくれと願い、アキレウスは遺体を引渡し、葬儀の間、休戦の約束をする。トロイア勢がヘクトルの葬儀を盛大に挙げたところで物語が終わる。常に人が死んでき、自分も明日は死ぬ身であることをひたすら感じ続ける。これほど悲壮感の漂う作品はないはずだけれども、実は何故かちょっと心地良いところもある。不安や悩みを抱えるとき、この叙事詩が慰めになり、この中に身を置きたくなることがきっとあろうかと思われる。そしてそこにオリュンポスの神々が介入し続けるのであるから、長大な詩を読み終える頃にはきっとギリシア神話の神々が他人事ではなくなっていることであろう。人々がこの作品を読み続ける限り、オリュンポスの神々も人々の中に生き続け、美術作品にもなるのも当然であろう。これは要約したダイジェスト版、ギリシア神話の解説書、トロイ戦争の映画等では絶対に体験できない。50日間を1万6千行で共有してこそである。さて、イリアスは叙事詩であるから、韻文であり、そして当時としても古い言い回しが使われていたという。日本語訳はいろいろあり、私などが批評できるものではないのだけれども、韻文風の訳だと、やはり日本語には違和感があるような気はする。もちろん韻文訳も素晴らしいが、しかし初めて読むにはハードルが高い。あまり話題になっていないけれども、個人的には小野塚友吉訳『完訳イリアス』がお薦めな気がする。まさかのですます調散文訳であり、読みやすさでは一番である。散文訳というだけはなく、この叙事詩は倒置法的な言い回しが多くて、その辺が日本語に馴染まないところがあるのだけれども、それを読みやすいように配置換えしているようである。なお、読みやすいけれども殺伐とした雰囲気には一切妥協がない。読みやすいのがいいか、叙事詩風の雰囲気を堪能するのがいいのか、ちょっと意見はわかれそうだけれども、まるで人気講師が講演をしているようなふうに自然に聞こえるので、ある意味、現代日本の語り部として考えればこれもありかと。

| 書籍・雑誌・漫画・アニメ | 10:14 AM | comments (0) | trackback (0) |
自宅のキハダから染料を取ってみる その2
自宅に植えていたキハダの木から黄色の染料を採って染めみる話のその2です。実際に染めに入ります。

さて、集めたキハダの樹皮であるけれども、前にも書きましたが、表皮と黄色層の間に緑の層があって、木から剥がした時点では緑の層が密着してるんですが、これってふつうどうするんですかね。
私は一応、手短にできる範囲で取り除いておきました。
キハダ
放っていても、やがて薄茶色になるだけで、染料としてそれほど大きな影響はなさそうですが。もし取り除くならば、まだ樹皮が木についている状態のときに刮いでしまった方が楽であろうかと思います。

そして、こちらが数日乾燥させた状態。
キハダ
もっと乾燥させたらどうなるのか見たいところですが、早く試してみたいので、今回はこの程度で。

染めるのは、Amazonで買った小サイズ木綿ハンカチ10枚入りの2枚。
キハダ

キハダ樹皮を煮出してみる。
キハダ
すぐに黄色い汁が出てくる。

キハダ
20分ほど煮たところで、樹皮を取り出して木綿ハンカチを入れてみたところ。

素晴らしい。立派な黄色に染まりました。
キハダ
黄土っぽい黄色とかじゃなくて、レモンイエローのような鮮やかな黄色。これはすごい。黄色と言われている色でも実は茶色っぽかったり、あるいは少量の染料しか採れなかったりとかいろいろガッカリすることがありますが、キハダは文句なくイエロー色であり、そこそこの量を染めることができるということで、大変立派な黄色です。
なお、2枚染めた布のうち、1枚は明礬で媒染しておいたのだけど、媒染なしとで見た目の色の変化はほとんどなかった。耐久性は変わるかもしれないけど。

キハダ
数日経って、皮を剥いたキハダ樹木を見たら、白く生々しかった樹幹が緑色になっていました。

さらに3週間ほど経ったところ、すでに樹皮と黄色の層っぽいものが形成されはじめており、すごい回復力だと関心。
キハダ
いや、これなら毎年取れるのではないか。

ちなみに、樹液も大量に出てきたのでのだけれども、どうも水溶性っぽいので、次はこれでアラビアゴム的な使い方ができるか試してみたいと思います。

| 絵画材料 | 07:56 PM | comments (0) | trackback (0) |
自宅のキハダから染料を取ってみる その1
2014年の3月、今から5年半ほど前ですが、自宅にキハダの苗を植えたのだけれども、だいぶ大きくなってきました。
キハダ
購入当時の記事は↓を参照ください。
http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=1179

そのキハダですが、樹皮を少々削ってみたら、黄色いものが見えたので、これはもう染料が採れるのではないか、ちょっと試してみようとやってみました。画材店で染料用のキハダチップを買って使ったことはあるけれど、生きてる木から取るのは初めてです。ちょっと調べてからやろうかなと思ったが、予備知識は無しでいってみることにしました。攻略本読みながらゲームやるとつまんないのと同じで、あまり調べすぎると感動がいまいちであるし、全く失敗しないと得る知識も少なかったりするものなので、じっくり調べているとついつい先延ばしになって何もしないで終わるパターンになりがちなもので。

というわけで、家にあった包丁で木の表皮を削ってみました。
キハダ
写真をご覧の通り、表面の茶色い表皮を削ると緑の層が出てきて、その下の黄色の樹皮の層があるようです。

キハダ
緑の層は、染色の時に余計な色素として邪魔になりそうなので、包丁で削り落としてみました。今は緑ですが、乾燥すると茶色になると思います。これは後で削り取った方がいいのか、それともこの状態で取った方がいいのか、あるいは放置したままで染色にほとんど影響ないのかわかりませんが、まぁ、あとで考えましょう。

キハダ
そして、包丁で黄色い部分を剥き取っていこう、と思ったのですが、黄色の層はそれほど厚くもなく、すぐ白い中身が現れてきました。まぁ、キハダという名前の意味が黄色い肌ということなんでしょうね。

キハダ
切込みを入れれば手でも剥がせるみたいです。生の木から取ると、なんかパパイヤを切っているみたいです。美味しそうですが、ちょっとないくらい非常に苦いです。昔は胃薬として嚼んでたとも聞きますが、ちょっと嚼んだだけで気持ち悪くなりました。

黄色層を剥かれてしまった状態です。
キハダ
ちょっと気の毒ですね。昔は皆、山に行ってこうやって樹皮を取ってきたらしいですが。

外側から、茶色い表皮、緑の層、黄色層、本体?となっています。
キハダ

というわけで、集めてみたキハダ染料、次回はこれで染色を試みてみたいと思います。
キハダ

| 絵画材料 | 12:40 AM | comments (0) | trackback (0) |
ワーグナー:ニーベルングの指環/カールスルーエ・バーデン州立歌劇場
現在、自家用車で片道1時間の道程を通勤しているので、買いためたCD BOXを聴きながら過ごしているとは前に書きましたが、この度、ワーグナー:ニーベルングの指環/ノイホルト指揮/カールスルーエ・バーデン州立歌劇場CD14枚組を聴き終えました。格安の指輪全曲BOXとして割と知られて存在ですが、格安の割には良い演奏だと評判なのですが、個人的には格安じゃなかったとしてもかなりCDなのではないか、とお薦めしたい気分です。全体的にかなりパリッとした演奏で、非常に聴きやすい、というか、かなり聴きやすい。そして、その割に要所ではなかなか迫力があります。ライブだけあって、臨場感があり、なんだかんだでけっこう感動的です。ジークフリートの終盤とかかなり迫力です。神々の黄昏も素晴らしい。個人的にはショルティのスタジオ録音のCDよりもずっと感動的な演奏である気がするんですが、どうでしょう。ただし、車載CDで聴いたせいかもしれません。エンジン音とか、ロードノイズとかあっても、聴きやすいという面があったかもしれません。部屋でヘッドフォンをかけてじっくり聴くと、ちょっともうちょっと凄かったような気がしたんだが、というのは多少感じないことはないですけれども、それでも、指輪を通して聴いたことがないという人に何か進めるとしたら、今のところはこのBOXが一番いいかなぁと思います。14枚も聴いていると、頭がワーグナー脳になり、ワーグナー意外の音楽を聴こうという意思がちょっと湧かなくなってきたりするところが怖いところです。
それにしても、ふつうに暮らしていたら、指輪のBOXを通して聴こうなどという余裕はなかなかないわけで、買ったまま放置しているCDがけっこう積まれているのですが、聴く機会があってよかったような。しかし、通勤時間が長いとは言え、意外とCD BOXというのは聴き終わらないもので。なんとなく繰り返して聴いてみたり、SDカードに入っているアニソンを聴いてみたりといろいろ気分にもムラがあって、まぁ、月に1BOX聴けたらいい方かもしれません。あるいは2ヶ月に1BOXかもしれない。次ぎに何を聴くか、というのはけっこう重要な選択である。


| 音楽 | 11:19 PM | comments (0) | trackback (0) |
画家鳥越一穂氏の作品届く
画家鳥越一穂氏の作品が届きました。
鳥越一穂氏、および作品等について詳細は下記を参照ください。
http://torigoeart.wixsite.com/medici

今回はM10ということで、これまでのたぶん巡回している作品の中では大きなサイズかと思われます。
さっそく設置してみました。
鳥越一穂作品

いろいろと聞きたいことも多かったので、せっかくですから、作者に語ってもらいつつ動画にしてみようということになり、以下の動画を作成するに至りました。よかったらご覧ください。
まずはモチーフについてです。

非常にモチーフの多い作品で、西洋絵画、とくにバロック期あたりの静物画を見慣れていると、けっこう馴染みのあるモチーフが多々出てきます。テーブル中央には蟹、これはやはり西洋の静物画にはよく見かけるモチーフでもっと大きくデカデカと描かれていることもあります。蟹、魚などは私も取り組んでみたいモチーフです。もっとも、一般的日本人、というか別に西洋人でも、現代ではどれくらい共感を得られるか、言い換えれば、売上に繋がるか、という点は心配なところがありますが、作者本人に聞いたところでは、やはり売りにくい要素だとのころでした。その他、各モチーフについて語って頂いております。

次は技法面です。

作品の表面はとても綺麗です。おそらくはきちんと油、樹脂等のメディウムを追加しつつ描画し、仕上げニスも塗布してあり、油絵らしい艶やかな画面となっています。キャンバスから制作工程などについて語って頂きました。

| 絵画材料 | 10:00 PM | comments (0) | trackback (0) |
コーパルに関する動画#3
様々の種類のコーパル樹脂についてマニアックに語っている動画の第3弾を公開しました。

実はずっと前に鳥越さんが編集を終えていたのですが、ここまでくると誰も興味ないだろうと思って公開を控えてもらっていました。が、そのままにしておくのももったいないので、年末年始のあまり人が居なそうな隙に公開しようという話になりました。まだ続きがありまして、3日連続で公開していく模様です。

ちょっと補足たい事項があります。ザンジバル島はかつてオマーン国が支配していた時期があり、それどころがザンジバルを首都に定めて、奴隷貿易、その他の貿易を行なっていたということですが、樹脂も大量に出荷されたことでしょう。ザンジバルは比較的小さな島です。興味深いのはマダガスカル島かもしれません。マダガスカル島はけっこう大きな島です。最近、生物進化についての本を読んだらそこでちょっとマダガスカル島に触れられていたのですが、マダガスカル島の森林の歴史は是非とも詳しく読んでみたいところです。そして、最近気になっているのは大陸の大移動です。超大陸パンゲアがバラバラになる当初の地図を見ていると、アフリカと中南米大陸はぴったりとくっついていたし、バルト海も近かったかもしれない。コーパルを出す樹木の進化に関係あるかもしれません。東南アジアはあんまり近くなったけど、あっちのコーパル樹木は属が違うし別ものなのでしょう。などと適当に考えたことを書いてみましたが、しかし、これらについて調べるような時間はたぶんないですね。



| 絵画材料 | 12:03 PM | comments (2) | trackback (0) |
天然ウルトラマリンの抽出実演動画 後編
前回、ラピスラズリ岩石を砕き、樹脂などでパテを作るところまで進みましたが、いよいよ抽出の場面です。

[Medici] 実践・天然ウルトラマリンの抽出 #2


チェンニーニの方法では、器と灰汁を換えつつ、くり返し抽出してゆくのですが、初めの方は濃い青が採れ、徐々に薄くなってゆき、最後の方にはアッシュブルーといったような灰色がかった青になります。しかし、実際やってみると、2番目の方が濃かったりします。

抽出後は丁寧に洗浄して完成となるのですが、そちらも収録して公開済です。

[Medici] 実践・天然ウルトラマリンの抽出 #3 天然ウルトラマリン顔料の完成~比較


抽出の段階によって、様々な色味、粒径のウルトラマリンが得られますが、どれがベストなのかというと、展色剤に何を使うかによっても変わってきそうな気がします。油絵具にするのか、テンペラで使うか、写本のようにゴムで使うか。また、この方法で抽出した後に、水簸などで粒径を分けることによっても、違うグレードの顔料ができるかと思いますが、その辺も動画で語っております。

| 絵画材料 | 11:04 PM | comments (9) | trackback (0) |
アガチスの木材サンプルを見つける
とある場所で木材のサンプルがいっぱい詰まった箱を見つけました。
かなり古いものです。インドネシア産の木材を中心に、かなりの数のサンプルが入っておりましたが、全て英語表記であり、当時の担当者がカタカナのシールを貼った形跡があります。まぁ、それはいいんですが、ちょっと眺めていたら、アガチスのサンプルが入っていました。
アガチス
アガチスはコーパル樹脂を産む樹種で、昨年公開した樹脂動画で散々語ったものです。

持った感じは、イメージしていたものよりも軽い感じがします。
アガチス
USESの欄を見ると、製紙などに使われたみたいですね。TRADE NAMEのところにDAMERと書かれていますが、この樹から出る樹脂はコーパルであって、ダンマルではありません。という話は経緯も含めて以下の動画を参照ください。



| 絵画材料 | 09:50 PM | comments (0) | trackback (0) |
テオフィルスの技法書にコーパルのランニング処理が書いてあるらしい件
マックス・デルナー邦訳版のコーパル樹脂の箇所に目を通していたら、(コーパルの樹脂を熱で油の溶かす方法は)プリニウスを始め古くからちょくちょく述べられていたけれども、はじめて正確に融解過程が述べられているのは、テオフィルスの諸芸提要においてであるみたいなことが述べられていました。コーパルの熱溶解方法が述べられていたとは、これは私としては迂闊だったというか、テオフィルスは何度もしつこく読んだつもりいたのですが・・。そのようなわけで、該当箇所と思われる部分を日本語訳版(中央公論美術出版)から抜粋してみます。

-- 引用開始 --

ニスと呼ばれる膠について
亜麻仁油を小さな新しい壺に入れ、フォルニスfornisと呼ばれる樹脂(1)を極めて細かく磨って加えよ。それは最も澄明な乳香の外観をもつが、砕かれると、より明るい光沢を放つ。それを汝が炭火の上にかけたならば、沸騰しないように入念に、三分の一が蒸発するまで煮よ。そして焔に注意せよ。何となれば、それは極度に危険であり、引火した場合には消すのが難しいからである。この膠で上塗りされたすべての絵は、光沢を放ち、美しく又全く長持ちがする。

-同じく別の製法で-(2)

火に耐えて割れないような石を四つ組合わせて、その上に新しい壺をかけよ。そしてその中に、ロマン語でグラッサglassaと呼ばれる、上述の樹脂フォルニスを入れよ。そしてその壺の口の上に、底に穴をもった、より小さな小壺をかぶせよ。そしてこれらの壺の間に蒸気が全く洩れぬよう、そのまわりに粘土を塗れ。その上で、この樹脂がとけるまで、入念に火にかけよ。更に汝は、細くて柄にとりつけた鉄棒を持ち、それで上記の樹脂が、すっかり液化したことを感じとり得るまで掻き混ぜよ。汝は、炭火にかけられた壺の傍に、中に熱い亜麻仁油の入った第三の壺を置くように。そして鉄棒を抜き出すと、糸の如きものを引く程に、樹脂が完全に液化したならば、それに熱い油を注ぎ、そして鉄棒で掻き混ぜよ。そして沸騰しないように、そのまま一緒には煮るな。そして時々鉄棒を抜き出して、少量を、その濃さを試すために、木又は石の上に塗れ。そして重さにおいて、油が二、樹脂が一の割合となるように留意せよ。もし汝が汝の好みに合うように、入念にそれを煮たならば、火から下ろし、蓋をとり、冷却するままに放置せよ。

註(1)《フォルニスと呼ばれる樹脂gummi quod uocatur fornis》を、Ilg訳およびde I'Escalopier版訳では《フォルニスと呼ばれる(アラビア)護謨》、またC.R.Dodwell訳では《sandaracと呼ばれる護謨》とするが、我々はテオフィルスがこのgummiの溶剤に亜麻仁油を用いていることから、これは護謨ではなく樹脂であるとするJ.G.Hawthorne-C.S.Smithの説を採ることにした。通常護謨は水溶性である。また同じくJ.G.Hawthorne-C.S.Smithは、本章に記された二つの製法において、恐らくフォルニスが性質を異にすることを推測している。
註(2)手写本のうち、Hのみがここで第XXII章を起している。

-- 引用終了 --

これってコーパルのことだったのか・・・。正直なところ、後半の方は3回くり返して読んでもちょっと何言ってるのか俄には理解しがたいところがありますが、コーパルを使って記述の通りに試してみたいところではあります。実際、チーズ膠など、他のメディウムに関してはかなり再現性が高く、けっこう確実なことが書かれている書ですので、参考にしたいところです。極めて細かく磨ってから、というのはヒントになりそうですね。なお、翻訳が独特ですが、「膠」はメディウム、ぐらいの意味だと思います。註も重要です。ゴムのことを「護謨」と漢字で記されているのは、さすがに少々読むのが辛くなってくるところです。

| 絵画材料 | 01:16 AM | comments (0) | trackback (0) |

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